BrandLand JAPAN

  • Project Report
  • Feb 27th, 2018

奈良の蚊帳製品をヨーロッパへ

事業者:有限会社井上企画・幡
プロジェクトマネージャー:青木千映

奈良県の地場産業である蚊帳と、古代から用いられてきた麻。このふたつの素材を使った服飾雑貨、テーブルウェア、インテリア商材を扱うのが、奈良市にある有限会社井上企画・幡です。今回、パリに拠点を置き、デザイン・雑貨・ファッション分野における日本製品のヨーロッパでの販路開拓に多くの実績を持つエービングプラス社と手を組み、蚊帳や麻素材の商品をヨーロッパに展開するプロジェクトを敢行。プロジェクトマネージャーの青木千映氏に総括を伺った。

まずは数ある商品の中から、
欧州に展開しやすいものを選定

 プロジェクトをスタートするにあたって最初に行ったのは、数多ある商品の中からヨーロッパに展開しやすいものを選定すること。当初は、素敵な商品がありすぎて、なにを出せばいいのかわからないのが悩みでした。例えば、蚊帳の生地を使った布巾がいいなと思ったのですが、布巾自体は他社からも販売されているし、これだけを売ってもビジネスにはなりません。また、井上企画・幡さんからは、ワンピースやスカートなど蚊帳の生地でできたファッションアイテムにも力を入れたいと言われましたが、正直、フランスでいきなりファッションを展開するのはかなり厳しいと思いました。

 そんな中、プロジェクトが始まってから約一週間後に、約3,000社が出展するヨーロッパ最大のデザイン・インテリアの見本市「メゾン・エ・オブジェ」が始まりました。これに出展することは既に決まっていたので、ブースで来場者の様子を伺うことにしたんです。この展示会には新規バイヤーも顧客も足を運ぶので、新規の開拓やテストマーケティングに最適です。弊社ではもともと弁当箱を扱っていますので、今回はそれを入れるための袋を展示して、訪れた人たちから商品の感想や価格などについて、たくさんの意見をいただくことができました。

苦労の末、コンセプトを
バカンスに決定する

 9月から10月上旬のパリは、デザインウィーク、ファッションウィークが続きますので、世界中からショップやメーカー、ブランドなどの関係者が訪れる絶好の機会になりますね。そこで「メゾン エ オブジェ」終了後も、パリのマレ地区にあるエービングプラス社のショールームで別の商品を展示して、訪れた人たちからさまざまな意見を伺いました。その結果、価格や色、デザインなど、ヨーロッパで受け入れられるための方向性がだんだん見えてきました。ただ、今回は期限のあるプロジェクトなので、イチから開発するのではなく、あるものをどうにかして変えていく形で進めることになりました。まずはパッケージの表記ですが、英語とフランス語に変えて、規定を順守しながらわかりやすく整えました。それから売りたい商品を闇雲に展開しても響きにくいことがわかったので、コンセプトを決めることになったんですが、これがなかなか決まらず、苦労しましたね。

 どんなコンセプトなら受け入れられるのだろうと日々思案しながら、いろいろな人から丹念に意見を聞いていると、ある日、展示する商品を見たバイヤーが“なにかキットを作ったらいいんじゃない?”と口にしました。それで、布巾があって、エプロンがあって、あとはタオルなんかがあるといいわねって言われた時に、ひらめいたんです。“あっ、バカンスだ!”って。フランス人はバカンスをすごく大切にします。それはつまり、いつもと環境を変えて日常を過ごすこと。都会での日々に疲れた人が、田舎でゆったりと暮らす時にオススメできる週末セットみたいなものをつくりましょうということになりました。

日本と大きく異なる
ヨーロッパのサイズ感覚

 バカンスからイメージしたのは、海やプールのある生活です。朝起きて浴びるシャワー用のタオル、そのあとすぐにマルシェに行くからバゲットを入れる大きめのバッグ、海や湖にも入るので、そこでパレオっぽく使えるショールなど、1日の生活を時間軸に沿って具体的にイメージしながら、それぞれのシーンに必要なものを井上企画・幡の商品に当てはめていきました。その上で再びバイヤーに意見を求めると、“シンプルでわかりやすくなった”とか“同じものでも魅力的に見える”など、方向性に関して手応えを感じられる言葉をいただくことができました。そして、ある時、肯定的な意見のあとに“だけど、サイズに気をつけてね”って言われたんです。ハッとしました。洋服に関しては、日本とサイズが違うし難しいのはわかってたんですけど、タオルもやっぱりヨーロッパのサイズがあるんですよ。さっそくほかの店のタオル売り場に出向いて、表示や並べ方などを調査。最終的に日本のサイズとは全く異なる3つのサイズに絞って展開することにしました。

 シャワータオルといっても、ヨーロッパの人のそれはかなり大きいんですよね。日本人の感覚からすると、こんな大きいタオルどうやって使うんだろう? って思うかもしれませんが、現地の人たちに見せると、みなさんやっぱり良いっていうんです。それでタオルをメインで展開することにしました。そしたら次はバスローブがほしいよねって話になったので、すぐに作って用意したんです。出来自体はよかったと思います。しかし、残念ながら高評価を得ることはできませんでした。サイズが合わなかったんです。みなさん、最初はいいねって飛びつくんですけど、試着した段階でキツイってなるし、おまけに丈も短かった。特に今回、興味を示したのは北欧の方が多かったので、余計に小さく感じたようです。

ヨーロッパではシックな
色目の洋服が好まれる

 サイズ同様、色に関しても日本とヨーロッパでは感覚が大きく異なります。布巾などの小物はカラフルな色が好まれますが、洋服に関してはシックな色目が基本で、カラフルな色は差し色として使われる程度。今回のプロジェクトでは、実験的にカラフルな色の洋服を展示してみましたが、やはり人気を得られませんでした。でも、デニムなどに使われるインディゴ、日本でいう藍色は予想外の人気を集めましたね。

 アイテムでいえば、野菜が乾燥しないように入れておくトートバッグタイプの野菜袋は、そういう用途の袋がヨーロッパにないこともあり、注目されました。ほかにも大、中、小のサイズのあるコットンの袋の一番小さいサイズにニンニクを入れて展示していたんですけど、それを見た方から“石鹸を入れて、お風呂で使ってもいいよね”と新しいアイデアの提案もいただくことができました。やっぱりニンニクを入れて使い方まで提案したからこそ、こうした結果につながったんだと思います。

 ブースに関しては、ただ商品をキレイに並べるのではなく、世界観を伝える演出を心掛けました。テーマであるバカンスの雰囲気を伝えられるように、デッキチェアや、洋服や花を入れたスーツケースを並べて、中央にはキッチン、そこに鍋や鍋つかみを置いて、エプロンをスタッフに着てもらいました。奥には鏡とハンガーをおいて、洋服をディスプレイしたんです。

 ヨーロッパの展示会では
ブースカードが必須

 9月の展示会やエービングプラス社での展示を通して、コンセプトや展開する商品、色、価格などを決めたら、11月、12月は、本番だと定めた1月の展示会に向けて、商品以外の準備を進めました。ウェブサイトを英語、フランス語でも読めるようにして、さらにフライヤー、カタログ、ブースカード、価格表を作成したんです。ブースカードというのは、名刺より少し大きいサイズのカードに、展示会のブース番号、ブランドのロゴマーク、商品ラインナップの写真、連絡先を明記したもので、1月の展示会に向けて500枚を用意しました。そのうち約200枚を事前に配って来場を促します。残りは会場のさまざまな場所に置き、時間のない人や興味をもってくれた人が自由に持っていけるようにしました。そしてその一歩先にあるのが価格表で、サイズはA4。欧米では商品ごとに全色をカラーパレットのような形で載せるのが特徴で、例えば、赤い色が5個ほしい時は赤い色の上に5と書き込めるようになっています。

 あいにく1月の展示会は毎日雨で、客足は鈍かったのですが、入念に準備をして臨んだだけあって、商談の数は42件を数えました。国でいえば、フランスが最も多くて、次にイタリア、UKと続きます。アメリカのミュージアムショップからも注文がありました。中でも南フランスにあるインテリア・ライフスタイルを提案している店と商談できたことがなによりの収穫でしたね。その後、2月下旬の時点で制約までこぎつけたのは9件。それ以外にも複数の会社と商談中です。

想定以上に良い反応
納品後の反響にも期待

 ここまでは順調で、掲げた目標はすべて達成しました。制約して受注もできました。でも、肝心の納品ができていないんです。2月後半の時点でみなさん待ってくれている状態で。インテリアデコレーションをテーマにした雑誌から掲載の打診をいただきましたが、ショップでの販売時期が決まらないと書けないと言われてしまって。今回は最初だったので、受注数がわからず、注文後に納品作業を行うことにしましたが、もう少しスピーディーにやりたかったですね。

 もちろん事前に在庫を抱えるようなリスキーなことはできません。そこが難しいところではありますが、逆に言えば、想定以上に反響が良かったということ。今、受注から納品まで1ヶ月以上かかっていますが、理想を言えば、2週間ほどで納品したい。商品が無事に納品され、店頭に並べば、メディアに取り上げられる機会も増えると思います。そうなれば、さらなる反響やそれに伴う事業拡大が期待できますね。