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  • Special Interview
  • Jan 15th, 2019

“人情”でまわる台湾の経済

青木由香(あおきゆか)
作家・你好我好有限公司 BlueTreePress 代表取締役
http://www.btpbtp.com

青木さんは、美術大学在学中から世界各国を旅し、2003年に台北へ移住。語学や足裏マッサージを学ぶ傍ら、創作活動を行う。05年には台湾の人々や暮らしの面白さを描いた『奇怪ねー』が台湾でベストセラーに。以降、日本と台湾にて台湾をテーマにした書籍を多数出版し、15年日台の雑貨や作家ものを扱うセレクトショップ「你好我好(ニーハオオーハオ)」を台北・迪化街にオープン。執筆やコーディネートなど幅広く手がけ、台湾を日本に、日本を台湾に伝える。

古くから布、乾物や荒物などの問屋が軒を連ねる台北・迪化街。お洒落なカフェや雑貨屋が次々とオープンし、古めかしい街並みと新しいデザインが混ざり合う、変化が著しいエリアだ。そんな迪化街の一角でセレクトショップを経営する青木由香さんに、台湾でビジネスをすることについてうかがった。

台湾と日本を両想いに

今では日本でも台湾のことが知られていますが、私が十数年前に台湾へ来た頃、台湾人は日本のことが大好きなのに、当時の日本では知られていませんでした。台湾と日本を両想いにしたいという思いを馳せながら執筆活動やメディア取材のコーディネートをするなかで、日台のよいものを紹介する空間をつくるためお店をオープンしました。

いいものを人に紹介するのが好きなんです。ショップでは台湾と日本を行き来するなかで自分が見つけたものや、人に紹介してもらって「自分で買いたいな」と思ったものを置いています。日本人観光客が台湾土産目当てにやってくるし、台湾人は日本のものが置いてあるので気になってお店に入ってきます。

ショップでセレクトする商品は、背景にあるストーリーを大切にしています。普段使われているものでも、デザインが洗練されていたり、ユニークな商品であれば地域やシチュエーションが変わっても使われていきますね。例えばこの「?」のローソク。台湾のケーキ屋では必ず売っている誕生日ケーキの上に置くローソクです。「歳が分からないようにしてほしい」というお客さんの声からできた商品なのですが、実は、この店のスタッフの実家で作ってるんですよ。台湾人にとっては当たり前のものでも、日本人にとっては目新しいから買っていくんです。その逆も然りです。基本的に自分がいいなと思って売っているものがメインですが、中には知人に頼まれて無下にはできず置いてみる商品もあります。人情ですね(笑)。でもそれが意外に売れることもあるんですよ。

人が人を動かす社会

台湾の人たちは、とてもゆるく結びついていると思います。日本ではあまり考えられませんが、親が生まれたての赤ちゃんにSNSのアカウントを持たせて遠くのおじいちゃんおばあちゃん等親戚に孫の様子を見れるようにしたり、実際に合わない人同士でも心理的な距離感が近いのかもしれません。最近、台湾で有名なパーソナリティーが出ているラジオ番組に出演し、台湾では1家に1台以上あると言われる万能調理家電「電鍋」を紹介したんです。そのあと、パーソナリティーのファンだというタクシーのおじちゃんたちがお客さん連れて続々とお店にやってくるという面白い事態が起きました。

極端に言うと台湾はすべて“人情”でまわっているんです。人の気持ちで経済が回っちゃっている。日本人だったら人から贈り物をもらった時、うちには合わないな、と思って物置にしまってしまったり、仲の良い人が物を売っていてもお財布を開く回数は少ないと思うんです。台湾の街中でふと「なんでこんな場所にこんなものが?!」という違和感に遭遇することがあり尋ねてみると、「友だちがつくったから」とか「親戚が売っているから」といった人情を大切にしたが故の違和感だったりするんです。家の中にあるものや着ているものに統一感がなかったりするのは、決してセンスがない訳ではなく、そういった人情でお財布を開くからなのだと感じます。「何故このお店が、こんなに繁盛しているのだろう」と思ってのぞいてみると、実は友人、知人や親族が全力で応援して買い物したり宣伝したりしているんです。だから、SNSを使ったプロモーションも「何を売っているか」よりも「売っている人・作っている人は誰か」に焦点を当てる方が多いですね。台湾の人たちは、知っている人から買うことをとても大切にしています。今や沢山の日本企業が台湾進出を目指していたり実際にビジネスをしたりしていますが、台湾でビジネスをする上で、そういった人情を大切にできるか、人とコミュニケーションを取ることに面白さを見出せるかがビジネスのヒントになるのかもしれません。

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