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  • Relay Interview
  • Jan 29th, 2019

編集することで、
その土地に潜在する価値を見出す

SUPPOSE DESIGN OFFICE
谷尻 誠さん・吉田 愛さん

建築家として尾道のONOMICHI U2や渋谷のhotel koe tokyoといった話題スポットの立役者でありながら、その肩書きを超えた幅広い活動を行うSUPPOSE DESIGN OFFICEの谷尻 誠氏と吉田 愛氏。近年は、絶景不動産という不動産会社や、東京オフィスに併設する社食堂など、クライアントワークに留まらない取り組みにも注目が集まっている。ふたりが手掛けた場所は、その周りの環境をも変化させ、そこから新たな文化が生まれるという。ヘッドオフィスを広島におき、場所にとらわれない活動を続けるふたりの価値観を通じて、改めて地域活性化のあり方を考える。

未来をわかりやすく提示して
その場に価値変換を起こす

吉田さん広島出身ということもあって、ONOMICHI U2(以下U2、尾道の複合施設)のプロジェクトは思い入れが強かったんです。地方都市が均一化していって、駅前だけ開発されて同じようなお店ばかりができていく。そんな状況は自分自身も嫌だったので、新しい魅力を定義しないと日本自体がよくなっていかないと思っていて。U2ができてから、若い人たちが移住してきたとか、素敵なお店ができ始めたとか、少しずつ吸引力に引っ張られて街が少しずつ変化していく様を見ることができて、本当に嬉しいんです。そのあたりから、ただ頼まれてやるのではなくて、自分たちでつくっていきたいということもリアルに考え始めました。

谷尻さん広島にヘッドオフィスがあるのですが、便利だから東京に移した方がいいんじゃない? ってよく言われるんです。でも、広島に存在する意味を考えたとき、僕らができることは繋ぐことなんじゃないかなと思っていて。東京で得たものを広島に伝えたり、広島のよさを東京に伝えたり、ふたつをブリッジさせることも自分たちならできると思いました。

吉田さん設計を軸足にして不動産を考えてみたら、新たな不動産の価値があるんじゃないかとか、飲食をやると新たな働き方が生まれるんじゃないかとか、今の不動産業界に足りていないものを自分たちの目線でやってみようという考えに至って、絶景不動産という不動産会社を立ち上げました。風景をリノベーションするという考えですね。穏やかな街作りのような感じで、自分たちが好きなエリアを少しずつ、自然発生的に作っていけたらいいなと。

谷尻さん不動産屋さんにとってのいい場所って、駅から近いというような、すぐ売れる場所なんですよね。でも、僕らが考えるいい場所はそういうことではなくて。もう少し生活が豊かになる、風景が美しい、そういった視点で土地をみたとき、その場所が不動産化されてない場合が多くて。でも、幸いに僕らは設計が得意なので、この場所ならこういう建築がつくれる、という未来を提示することで価値変換が起きるんです。ひとつの敷地にしろ、街全体にしろ、何か自分たちなりのできることがあるんじゃないかと思い始めたんですね。

街全体をひとつの施設に――。
その拠点を自らの手でつくる

吉田さん今は広島に自分たちでホテルを作っている最中です。世界から人が見に来てくれて、寝たり食べたりといった、すべての生活を通して、自分たちがつくった空間を体験してもらえることが理想です。

谷尻さん街に森をつくるようにホテルを作ったらどうだろうというのが最初の考えですね。普通ならビジネスホテルになってしまうところを、例えば部屋と同じくらいのテラスがあって、テラスにはお風呂があって、そこで食事ができたり、ベッドがあって布団にくるまれて寝る幸福感を味わえたり。キャンプじゃなくても、街でそういう体験ができる場所があれば、そこに行きたいっていう能動性が生まれると思っています。“体験”がある空間ができればいいなと思っていて……やっぱりビールを飲むのもお風呂に入るのも、外のほうが気持ちいいですよね。

吉田さん今どきのホテルって、窓も開かないじゃないですか。自分たちのために建築物をつくるとき、環境や自然を通して、どう心地よさをつくれるかということをいつも考えています。

谷尻さん不動産があることによって、この土地を買うとか、開発をするとか、そういうことを自分達できるようになれば、街の一部を僕たち自身で変えていくことができる。そうすることで、点が線となって、線が面になってカルチャーが生まれていくと思っています。大きなものをどんと建てるというより、ここで眠る、ここで食べる、ここで遊ぶといった、街をひとつの施設のようなものにできるんじゃないかなって。昔は冷蔵庫が酒屋で、洗濯機が銭湯で……と、自分が住んでいる場所にそれぞれが単体であって、お互いに助け合うような関係性で成り立っていたんですね。だから、もっと街を使ってそういうことができれば、それはとても豊かなことなんじゃないかなって思うんです。

まったく新しいものではなく、
“境界”に存在する価値とは

谷尻さん僕らはいつも何かプロジェクトを手掛けるとき、内と外や、パブリックとプライベートなど、“境界”について考えています。たとえば、その境界線が一本の線なのか、あるいはぼんやりとしているのか、もしくはAとBの間にCがあるのか。そして、それらをどうやって繋げていけるのかいつも考えているんです。なぜなら、それらはもともと繋がっていたものだけど、今の時代や社会が分けただけだと思っているんですね。だから、もう一度あるべき姿に戻したいという感覚が強いんです。

吉田さん新しい価値を見出したい、価値変化を起こしたいと思ったときに、誰も知らないまったく新しいものを作るというより、もともとあった境界を考えます。たとえば白と黒なら間にグレーがあって、しかもグレーにもいろいろな種類のグレーがある。そこに新しいものが潜んでいるんじゃないかなって思うんです。そこに新しさというものを切り取りたいという思いがあります。

谷尻さん建築家は少し先の未来を見据えることができないと成立しないんですよ。未来っていうほどの未来じゃないけど、一歩先というか。実際につくって人が来るようになるまでは、不安ばかりを定義されるんですけど、実際に物事が動き始めると、やっぱりこの人たちにやってもらってよかったという意識改革が行われます。それまでは否定的な意見を言っていた人たちが、前からいいと思ってたなんて言い出すこともあったりして(笑)。

吉田さん商業施設であれば、今だけ人が来ればいいという考えではなく、長い目で見たときにその地域にとってどうあるべきかを考えます。今求められているからといって、ブルックリンにあるような店を作っても、それは一過性のものでしかなくて。その場所に来たとき、どういう体験ができるのか、何を残して何を新しくすべきか、時間軸を長くとらえることが重要だと思っています。

地域の魅力を発掘するには、
まず“自分ごと”にすること

吉田さん先日、鎌倉に『面白法人 カヤック』さんの社屋をつくらせてもらいました。そのとき、経済だけでは測れない、満足度で価値を数値化したらどうだろうっていう話をされていて、それがすごく面白いなって思ったんです。ただお金が生まれれば、それが幸せかというとそうではないですよね。地方で新しい仕組みをつくれば地方がもっと面白くなるし、何なら地方のほうがもっといろいろなことができるんじゃないかと思っています。私たちも、これから広島にホテルをつくるので、広島のほうがいいとか、東京のほうがいいとか、そういうことではなくて、多様性がもっと現実的になっていくのではないでしょうか。私たちもそういう働き方や暮らし方できればいいなと思っています。

谷尻さん地方の魅力を掘り起こすには、まず、やると決めることです。普通に生活していると、こういうものだと思ってしまうけど、自分を街づくり会社なんだとマインドをセットすると、この街の魅力ってなんなんだろうって考えざるを得なくなるんですよ。そうすると、自分の眼差しが変わってきます。いつも心にカメラを持てといわれるように、自ら魅力を見つけようとするようになるんです。

吉田さん自分ごとにならない限り、結局楽しくならないんですよ。行政に期待しても何も変わらないなら、自分で何かやってみるしかないんです。そうすると、誰かがいいねって言ってくれるようになったり、自分もこうしているよって言う人が現れたり、自然に出来事が生まれてくる気がします。だから、私たちも自分たちでやるって決めて実行しています。

谷尻さんwantをhave toにするっていつも言ってるんですけど、やりたいと思っているうちは、問題点をあぶり出そうとしないし、方法も実は考えていない。でも、やると決めたら、どうやればできるのかを考え始めます。

吉田さん世の中で成功している人は少ししかいないってみんな思っているけど、実はほとんどの人がやってもいないんです。動き始めた人は、ほとんどの人は成功しています。それに、1日で失敗するわけじゃないですから。穏やかに失敗していく。その過程で、そこで何をやればいいかを考えればいいだけなんです。

谷尻さん失敗しないと問題点があぶりだせないんですよ。失敗しない人は結局、問題点がわからない人で、失敗した人は問題点がわかっているから、きちんと解決策を考えることができるんです。ホテルに関してもそうで、自分たちがリスクを冒していくことが、クライアントが持っている不安を理解するっていうことなんですよね。クライアントワークだと、お金を出してもらっているから結局リスクがないんですよ。本当に人が来るんだろうかって、自分たちも不安を覚えることで、信頼も得られんじゃないかと思っています。

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