BrandLand JAPAN

  • Relay Interview
  • Jan 19th, 2019

何を与えられるか、ではなく、
何を掴むか。

株式会社ロフトワーク
二本栁 友彦さん

Brandland Japanの前身となるジャパンブランドプロデュース事業が2014年から2016年に渡り累計3年行われた「MORE THAN プロジェクト (以下:MORE THAN)」だ。目的はBrandland Japan同様、海外進出を目指す日本のものづくり企業を支援する補助事業だ。3年間、その企画・運営を担ったのがWEBのデザインや空間・イベントプロデュース等を手がけるクリエイティブ・エージェンシー、株式会社ロフトワーク。クリエイター集団がどのようにして事業を展開していったのか、そこから見えてきた課題や事業の本質について、プロジェクトを指揮したディレクター二本栁友彦氏に聞いた。

クリエイティブ・エージェンシーが
プロデュース事業を運営する意義

ロフトワークはデザインやものづくりの過程をプロデュースするクリエイティブ・エイジェンシーです。WEBサイトをはじめとするデジタルコミュニケーションや空間、イベントのプロデュースなど、多岐に渡る領域でクリエイティブを活用した事業展開を行っており、地方創生事業や地域のPR事業がメインというわけではないんです。

2009年あたりから越後妻有の「大地の芸術祭」や「瀬戸内国際芸術祭」など、地域のプロデュースに関わるようになりました。具体的には、国内外のクリエイターと地域の名産品のこれまで気づいていなかった魅力を新たな視点で見つめ直し、その名産品のストーリーを可視化し、新たなパッケージデザインで販売する、ということを手がけました。それが世の中の流れにうまくはまり、結果として地域事業者のリブランディングや地域の新たな価値表現に繋がりました。その経験から、採択事業者として声がかかり、プロポーザルを提出したという流れです。

そのため、僕たちがMORE THAN プロジェクトでもっとも注力したのは自分たちの強みであるクリエイティブを事業内に組み込んでいくことでした。プロジェクトのWEBサイトはもちろん、各事業者の活動レポートや中間発表会を含む事業報告イベントの開催場所まで、アウトプットや見せ方にはこだわりました。同時に、プロジェクトを通して作ったタペストリーやリーフレットなどは全て事業者に譲渡できるようにしました。せっかくこだわって作っても使われなかったり、使い捨てられたら意味がない。事業者に渡らない・もしくは必要とされていない無駄なものは一切作らないようにしていましたね。

クリエイティブだけでは
打破できない海外進出のリアル

MORE THAN プロジェクトは合計3回(3年)やりましたが、毎回が発見と反省の繰り返しでした。1回目で感じた課題を2回目には改善し、さらにそこで学んだ教訓を3回目に活かすという具合。よって、こんなことを言うのは1回目に参加してくれた事業者には申し訳ないですが、やはり3回目が事業者に対して最も手厚く対応できたと思います。

具体的に言うと、初回は私たちも手探りな部分が多く、正直、海外進出における知見が足りてなかったと思います。国を越えるということは、関税、輸送コストなど、様々な条件が付いてまわり、現地での売価が国内の2倍や3倍になるのが当たり前。その上で世界中の競合商品とどう差別化するのか?競合商品の相場価格は?そもそも誰に売るのか?などなど。クリエイティブも大切ですが、その前にやるべきことがあまりに多すぎた。現地のリサーチをするだけでも膨大な時間と費用がかかるということをその時あらためて実感しました。

あと、これは事業形態の特性上、仕方ないことなのですが、実際に海外に出ていった企業をその後もサポートすることができなかったのが心残りでした。様々な障壁を一緒に乗り越えて、なんとか海外には出ても、実は本当の勝負はむしろそこからなんです。現地でどうやってネットワークを作り、ファンを増やして、コミュニティを作るか。そのフェーズまで関わることができず、海外に出てはみたけど続かなかった、という企業をたくさん見てきました。

しかし、それらの教訓を活かし、2回目、3回目では、プロジェクトのアドバイザーも、海外の小売市場やプロモーションの知見に長けた人や、実際に現地パートナーやネットワークを持っている方々にお願いするようにして、プロジェクト終了後も事業者が自走できるような関係性づくりに配慮しました。

プロジェクトを通して実感した
さまざまな「ギャップ」

MORE THAN プロジェクト自体はとても意義のあるプロジェクトでしたし、社内外からも評価いただき、個人的にも貴重な経験ができたと思います。中でも海外というより、国内で生じている「ギャップ」を発見できたことが大きな収穫でした。

そのギャップの一つは、海外に出ていく際に障壁となるものは、物理面や価格面だけでなく、事業者の精神面も大きいということ。これは島国である日本特有の価値観なのかもしれませんが、多くの事業者、特に歴史あるところでは、そもそも初めから海外進出を見越してものづくりをしてきたわけではないという経緯があります。まずはそれを自覚し、これから新たな舵取りをすることへの意識改革が必要なんです。だからこそこのような事業があると言っても過言ではありません。そもそも海外で売る前提であれば、そもそも支援事業は必要ないですから。商品パッケージなど、装いを演出することはいくらでもできますが、まず第一ステップとして事業者のマインドセットを変えていくことが必要です。

そして、その時に知っておくべきことは、プロジェクトと事業者との間に認識の差があること。例えば事業者は「プロデューサーって何?」「デザイナーってどこで出会えるの?」「いくら払えばいいの?」などの基本的な質問をしたいのに、それに対する回答もないままに、「プロデューサー人材つけなきゃダメ!」「外部クリエイターをつけてください!」と言われ、真意を理解しないまま、なすがまま。結果、プロジェクトが終わった後に「やれと言われたからやったけど、結局なんだったんだ?」と消化不良になる事業者も少なからずいました。

そうしたもったいないボタンの掛け違えを防ぐために作ったのがMORE THAN プロジェクトのWEBサイトの中にある「100Q」というコーナー。実はこれは今でも更新を続けているんです。プロジェクトの初期段階で生まれやすい質問とそれに対する歴代のプロデューサーやアドバイザーたちの回答、さらに少し突っ込んだ質問なども掲載しています。結果、事業者だけでなく僕たちにとっても重宝できるナレッジ集になっていて、ことあるごとに「まずはこれを見てください」と紹介しています。

あとは、事業そのものの認知度がまだまだ低い。特にこの支援事業を必要としているであろう地域の方々に知られていないのが実情です。これはまずいと、3年目は地域に赴き事業を知ってもらうためのキャラバンも行いました。その後もことあるごとに地域でMORE THAN プロジェクトを始めとした支援事業の話をするのですが、必ずと言っていいほど「そんな事業があったんだったらもっと早く知りたかった」と言われます。こういう事業がある、チャレンジするサポートがあることをもっと多くの企業、個人に知ってもらいたいですね。

事業の本質を享受するための
マインドセット

事業の目的は一緒でも、形は常に変わるべきだと思っています。先ほど申し上げた通り、弊社が運営した3年間でも毎年スコープを見直し、どうブラッシュアップして、何をアドオンしていくのか、ガチンコで考えていました。参加する事業者が変われば出会う人も変わりますし、その上、目まぐるしく変化する世界市場が舞台な訳です。変化することにコミットできなかったら、プロジェクト自体うまく行くはずがないですからね。

事業フレームをフレキシブルに考える中で、3年間常に根幹にあった意識は「これは誰のための事業か」ということでした。その答えは「事業者のため」。それを行政も含めた運営チームで常に確認しあっていました。事業者たちがこのプロジェクトを通し、何を掴み、何を得るのかが最大の焦点であり、最優先事項。プロジェクト全体としての業績や評価、社会的意義などを考え始めるとキリがない。事業者のためになるのであれば、少しぐらいフレームを超えたこともやる。そんな覚悟でした。

個人的な狙いとしてはプロジェクトフレームのセーフかアウトか、ギリギリのラインを狙うようにしていました(笑)。だからこそ行政とも事業者ともたくさん議論しました。でもそれは「前例」を作りたかったから。これは事業者だけでなく、僕たちのような運営事業者にも言えるのですが、与えられたフレームを淡々とこなすだけでは学べるもの、得られる価値は少ないと思っています。ましてやこのプロジェクトはあくまで「補助」事業なので、受け身でやって成果が出るはずがないんです。このようなプロジェクトの本質は、そこに集まるヒト・モノ・カネを徹底的に活用し、自分達の財産となりえる知識、経験、人脈を得ること、なんです。

得られるものは姿勢次第
有意義な一年を過ごして欲しい

おこがましい言い方で恐縮ですが、プロジェクトを通して与えられた課題にちゃんと向き合えるか否かで、事業者のその後の成長度合は変わってくると思います。「自社PRなんて書いたことない」とか「レポートを書くのが面倒くさい」とか、色々な声を聞いてきましたが、自社の事業を明文化したり、ヴィジョンを言語化したり、自分たちの強みを自分たちで理解することは、遅かれ早かれ必要なことなんです。逆に、そんなことも出来ない企業が世界で戦っていけるはずがない。

同時に、運営事業者をかばうつもりはないですが、僕は参加した事業者が100%満足する支援事業なんてないと思っています。MORE THAN プロジェクトに参加した事業者から、直接クレームを言われたこともありました。それぞれの言い分もあり、プロジェクト側の事情もある。その中で重要なのは、いかにお互いを利用し合えて、その先を設計できたのか、ということです。スキームにただ乗っているだけではプロジェクト本来の価値は掴めません。補助事業はあくまで一時的なツールであり起爆剤。自分たちが本当に到達したい1年後以降を想像し、そのために事業を活用する。そんな有意義な一年を過ごして欲しいと思います。

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