BrandLand JAPAN

  • Relay Interview
  • Jan 19th, 2019

その国に親友がいるから
ビジネスが始まる

バイヤー/クリエイティブ・ディレクター
山田遊さん

フリーランスバイヤー、クリエイティブ・ディレクターとして国内外の最前線で活躍する山田遊さん。現場を熟知したリアルな目線から、海外進出に欠かせない心構えや現在のマーケット事情について学ぶ。

これまでのバイヤー経験を活かし
自分にやれることを仕事にしてきた

仕事の内容は多種多様です。今、ビジネスとデザインの接点がよく話題になりますが、両者の橋渡しを担うことが多いですね。メーカーから「ものづくりをしたい」と依頼を受ければ、適任と思えるデザイナーを探して一緒に協業し、ブランドづくりから携わります。営業や卸の経験もありますので、具体的な販売戦略まで検討します。また、小売店は人がいないと何もはじまらないので、これまで様々なイベントを主催してきた経験を集客に活かしています。 国内企業のほとんどは中小ですが、ブランドづくりや流通、さらには経営についても不確かな企業が少なくありません。ときには経営コンサルに近い部分まで携わることもあります。 僕は僕がやれることしかできませんので、その経験とノウハウを活かせる仕事をやってきたという感じです。

特定分野だけに絞らず
周辺領域の知識や経験も磨く

自治体や国からも事業を請け負っていますし、最近はホテルのプロデュースやディレクションも増えてきました。特に時代を感じるのが、ワイナリーの新設やラーメン屋のプロデュース、商品開発、ブランド開発など、「食」案件の急増です。もともと自分の専門性はデザインのフィールドですが、最近では仕事の半数以上が「食」案件ですね。 強みを深めるのも重要ですが、それでは視野が広がりません。それに得意技だけを売り物にするのは、僕自身興味を持てないんです。やったことのないことにチャレンジし、吸収していきたい。 専門性を高めるとは、一分野にだけ特化するのではないと思うんです。特定分野を深掘りしていくと、周辺も一緒に掘れていく。地下深くまで一直線に掘るボウリング作業とは違い、人力だと周りも掘り進めないといけないじゃないですか。あれと同じで、たとえばインテリアやデザインの領域を深掘りしていくと、隣にあるファッションやアートまで自然と掘れていくんです。特に今はあらゆる境界がなくなりつつある時代ですから、余計に周辺領域も含めた知識や経験が必要だと感じています。

「海外で売りたい」という
漠然とした幻想を払拭するべき

大前提ですが、海外進出を検討するなら、具体的にどの国でどう売りたいのか具体的に想定するべきです。国内ですら「47都道府県すべてで売りたい」というのは無謀なのに、「海外で売りたい」と一括りに発言してしまうのは問題です。いきなり世界各国からまんべんなく受注が入るなんて、幻想に過ぎません。さきほどの専門領域の話と似ていて、一箇所を深掘りしていくとその周辺も深まっていくように、まずは特定の国に進出し、そこから周辺国へと手を伸ばすのが現実的でしょう。 ファッションならパリ、インテリアならミラノと、各界の中心地からはじめるのも悪くはありません。ただ、自分たちの商材が本当に受け入れられるのかを真剣に検討したのなら、です。海外展開の視察と称して、ただ観光したかっただけの人たちもいますから(笑)。 あらためて言うまでもない話ですけど、実際に相談を受けていると、そうした幻想を抱いているメーカーは以外に多いのです。

「メイド・イン・ジャパン」の信頼性に
あぐらをかいては世界で勝てない

海外進出を検討しているというメーカーと話したとき、フロンティアスピリットが少し足りていないと感じることがあります。確かに日本のモノづくりは一定の評価を得ていますが、値段が張ることも多く、競争力には不安がつきまといます。その自覚が足りずにぼんやりとした気持ちのままでは、うまくいかないでしょう。結局、そこまで求められているのか?という話です。日本酒や和食は人気とはいえ、ただそれだけで他に勝てるわけではありません。 今、需要でいえばラーメンが突出していますね。人気店の仕掛け人はフロンティアスピリットも高く、ニューヨークへの出店を検討、決定した後に即出店するケースも多いです。

進出を目指している国や都市に
家族になれるほどの友人はいるか?

進出する国や都市の選定やブランドのローカライズを進めるには、現地とのコミュニケーションが不可欠です。風習や商取引文化、消費者動向を探るという意味もありますが、なにより信頼のおける人物がいなくてはなりません。契約上のつきあいではなく、友人としてです。助けてくれる友人が4~5人くらいいて、そこから人のつながりも広がり、ときには彼らがビジネスパートナーになることで、仕事は動き始めます。自分たちのブランドを正確に伝えてくれるセールスレップやブランチを現地に置かなくては、地元で円滑なコニュニケーションは図れません。 国内でも同じこと。その明快、明白なやり方を、海外でどう進めるかという話です。 なお、海外のパートナーやセールスレップとは深い親交を結び、家族になれるくらいの関係であるべきです。世の中にはたくさんの"専門家"がいて親しげに近づいてきますが、金儲けだけを考えている人間は、一定の距離を取ろうとするものです。ビジネスだからと表層的な関係ではなく、心底から信頼できる人物かどうか見極めるべきだと思います。

自分自身の価値基準をもとにした
健康的なコミュニケーションを

海外でのコミュニケーションは、とても健康的だと僕は感じています。日本だと周りの意見やトレンドを踏まえた価値判断をしがちですし、立場や力関係を考慮した上でオブラートに包んだ言いわましをする人が多い。しかし、海外の人は確固たる価値基準を自分の中に持ち、良し悪しや好き嫌いを率直に話してくれます。僕の感性もそちらに近くて、どれだけ有名なデザイナーの作品であろうといいものはいいし、悪いものは悪いと自分で判断する。もちろん僕の場合はクライアントの要望に沿っているかという判断も条件に加わりますが、評価をストレートに伝え合い、率直にコミュニケーションできるのがすごく楽しいですね。

"コト"から始めて"モノ"に届くという
回り道こそ成功への近道

近年、ロンドンやミラノなどでの展示会では単にモノを見せるだけでなく、イベントを組み合わせたほうが好反応を得られます。たとえば金物の街として知られる燕三条の製品を展示するのに、現場で鍛冶技術をプレゼンしたり、技術者にフォーカスをあてたりしたところ、多くの反響を得ました。最初からモノを売る気満々でいるより、"コト"から始めて"モノ"に届くという、ちょっと回り道に見えるやり方なのですが、そのほうが結局売れるんです。僕が手がけている案件ではコトの伝達をメインに据えるケースがほとんどで、モノ売りは"ついで"と考えることさえあります。 "モノ"を売るため"コト"をどう魅力的に見せるのかが、今後大きく問われるでしょう。僕らは、その部分の工夫やクリエイティブをサポートできると考えています。

"コト"からはじめることで
チャンスに巡り合う

もちろん最終的にはモノを売りたいわけですが、モノを売ろうとすると相手はイエスかノーかでしかリアクションできません。それは、とてもつまらないことではないでしょうか? どこにチャンスが転がっているかわかりません。バックストーリーの解説や技術披露によって、想像していなかったような反応を生むことがあります。日本の鋤を見て部屋に飾りたいという人や、日本で職人になりたいという若者、名刺入れの品質の高さに涙を流す御婦人など、いろいろな出会いがありました。自分たちのブランドをよく理解し、その上で正しい内容と方法でコミュニケーションする力が求められています。

アウトバウンドとインバウンドを
包括的に検討すべき

これだけ多くの外国人観光客が来日している現状を考えると、アウトバウンドとインバウンドは一体で考えなければならない時代になったのだと思います。世界各地で燕三条の展示を行えば、海外での販路が拡大する一方、現地を見たいと燕三条へ訪問してくれる人も増えていきます。いろいろな意味で、国も人も距離が近くなっている。ただ海外に店を出したことだけが"世界進出"ではありません。アウトバウントとインバウンドの一体化を前提に、どう動くのかがこれからの時代に不可欠な視点となるでしょう。

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