BrandLand JAPAN

  • Project Report
  • Feb 27th, 2018

「泳ぐホタテ」を中心とした、

最高品質の食材と加工品の
海外マーケティング実施

事業者:有限会社ヤマキイチ商店
プロジェクトマネージャー:山口幹生

海で過ごしている状態のままホタテを発送し、活きたまま食卓へ届ける「泳ぐホタテ」をはじめ、活アワビ、イクラ、ウニ、ワカメ、ホヤなど岩手県の三陸の海で獲れる最高品質の海産物と加工品の海外マーケティングを実施。香港やシンガポールを中心に事業展開を行うプロジェクトです。プロジェクトマネージャーの山口幹生氏が海鮮食材の海外発送の難しさや事業のポイントについて振り返りました。

海外の飲食店や個人にも
「泳ぐホタテ」を届けたい!

 離島も含めて日本全国の人たちに活きたまま送り届けている「泳ぐホタテ」を中心に、イクラやウニなど特別な商品を、それを求めている海外の人たちにも届けたい。そんな思いから、今回のプロジェクトがスタートしました。この事業を展開する有限会社ヤマキイチ商店は、昔から個人のお客様を大切にしてきた会社で、食材の良さだけでなく、現場で働いている人たちの人柄を含めたストーリーを伝えることで、「泳ぐホタテ」をはじめとする商品のファンになってもらえる人を香港やシンガポールでも見つけたい。飲食店だけでなく、個人の方にも気に入ってもらえる機会を模索するのが当初の計画でした。

 ホタテに限らず、日本の食材を香港、シンガポールに売り込む場合、現地の日本食レストランや和食レストランは、仕入れに関してすでに独自のルートをもっていたり、そもそも食材を輸入している商社が店舗を経営していたりすることも多く、新参者はなかなかそこに入り込めないことがわかりました。もし新しく販路開拓をするのであれば、和食以外の創作系やフレンチやイタリアンのレストラン、中華料理店などを対象にしたほうが話を聞いてくれる可能性は高かったです。本当に良い商材であれば評価してもらえるし、契約に至りやすいと思います。

現地のレストランのトップシェフは
日本の食材に精通している。

 香港やシンガポールのハイレベルなレストランのシェフは、日本の食材に精通していますし、かつおぶしひとつとっても、日本で製造工程を見たことがあるような人ばかり。食材ひとつひとつにものすごくこだわっています。そこで現地のレストランのシェフにホタテを味わってもらったところ、特に大きさと味のよさに関して非常に良い反応をいただくことができました。400g以上の貝柱を安定して供給できる業者はあまりいないこともあり、国内の価格の倍近い価格で買っていただけました。とはいえ、価格が上がった分は物流費などで消えてしまうため、価格の割に儲かるわけではありませんが、十分な手応えがあるのでこのまま話を進めていこうと思います。スーパーシェフたちの間では、いい食材に関する情報交換が国境を越えてなされていますので、広告宣伝やPRを行うよりも、現地の感度の高いシェフにひとりでもいいから気に入ってもらえたほうが、情報が横に広がっていき、より効果的だというアドバイスもいただきました。

 一般の消費者も現地の日系スーパーなどにそれなりにおいしい刺身などはあっても、泳ぐホタテのような感動レベルの生鮮食品はなかなか手に入りません。実際、ホタテを食べたシンガポールのバイヤーからは“こんなに甘くておいしいホタテは食べたことがない!”と興奮気味に褒めていただきました。そんな反応を見ているうちに、もしかしたらBtoCでも販路を開拓できる可能性があるかもしれないと感じました。

シンガポールはコスト意識が高い。
香港は本当に良いものは高くてもOK。

 市場動向ですが、香港とシンガポールは少し違う印象です。共通しているのは日本の良い食材を手に入れたい方が多いってこと。でも、シンガポールは価格に厳しくて、食材のコスト意識が高いですね。現地で1枚400円程度で販売されている北海道のホタテと比べられることが多く、我々が今の物流ルートで想定している泳ぐホタテの価格は考えられないと言われました。ただし、サンプルを試食してもらったあとは、1200円くらいであれば買ってもいいという反応に変わったので、北海道のホタテよりは品質がいいと暗に認めてもらったという自信にはなりました。逆に香港は本当にいいものであれば、価格が高くても買っていただける傾向が強い印象です。

 BtoCで考えた場合、ホタテは刺身で食べられるものとして香港もシンガポールも日本の食材を扱うレストラン内のお刺身コーナーに海鮮食材が安定して並んでいたので、現地の人たちに人気であることはよくわかりました。また日系デパートに鮮度のいい海産物を販売する期間限定ショップが登場した時にものすごい勢いで売れたそうで、まずはそういう形で販売してみるのもいいんじゃないかというお話もいただき、BtoCはようやくやり方が見えてきたところです。

海鮮食材を海外展開する場合、
一番の難題は物流。

 でも、海鮮食材を海外に展開するには、乗り越えなければならない大きなハードルがいくつかあります。例えば、日本から海外への物流に対する基本的な手続き。香港は関税がかかりませんし、直送するためのライセンスもいりません。一方、シンガポールはライセンスが必要で、現地にもライセンスを持っている配送のパートナーの存在が必須など手続きや条件的なハードルが高い。

 さらにもっと大変だったのは、BtoCの現地での物流です。日本では生鮮食品を送る人が多いのでクール便のサービスがありますが、香港やシンガポールには同様のサービスがないんですね。専門業者が独自でもっている物流網はあります。でも、法人向けのサービスに限られ、一般の人は利用できません。泳ぐホタテの場合は、海水と、海水でつくった氷を入れて送るのですが、クール便が使えないとなると、季節や運送ルートの気温などによって氷の量を変える必要があります。あとは時間指定の問題もあります。日本では基本的に指定した時間通りに届けてくれますが、香港やシンガポールでは全然時間通りに届かない。そのため、店も個人も品物の受け取りが大変。特に生ものの場合は、クール便ではない上に時間通りに届かないのは致命的です。

実際に現地に商品を送り、
その結果をもとに対処法を考える。

 しかも物流のコストは量によって変動します。ただ、これはBtoBが軌道にのり、取り扱う量が増えれば、BtoCのコストも安定してくるのではと思います。またネットで注文を受けて配送する場合、例えば、商品が届かないとか、届いたけどホタテが死んでいたなどのトラブルへの対応窓口がないことも問題です。日本国内では現状、言語の関係で対応ができませんし、外部の業者にお願いするとコストがかかる。そこでまずは今回お会いした20人から30人くらいの方に定期配送を行い、届いた相手から写真や動画を送ってもらってホタテの状態を確認。それを見ながら、どんなビジネスモデルであれば成立するのか引き続き検討していきたいと思います。

 今後の展望ですが、BtoBに関して言えば、香港のシェフへの展開から始めて少しずつ取引量を増やし、物流コストを下げたり、評判を高めていきながら、シンガポールやその他の国にも展開していければと思います。具体的な販売先やファンになっていただけるようなシェフの方と出会うことができましたので、有名なレストランとの取引が始まれば、香港やシンガポールの、あのレストランに卸してますよと言えるので、日本でも売り上げを伸ばす大きな力になると思います。そして、どこかのタイミングでBtoCにも参入していきたいと考えています。

もっとも大切なのは、
現地のパートナーの情熱。

 今回のプロジェクトがひと区切りついて思うのは、取り組みに対するパッションが重要だということ。自分たちが情熱をもって売り込みを行うことは当然大切ですが、本当に大事なことは、同じように情熱をもって一緒に仕事をしてくれる人が現地にいるかいないか。今回、香港でさまざまなことが前に進んだ理由のひとつは、現地で我々と同じ志をもって動いてくれる日本の方がいたから。以前から泳ぐホタテを知ってくれていて、共感してくれた。そして、いろいろなバイヤーやシェフの方をご紹介いただけました。さらにご紹介いただいた方と食事などをしながら意見交換しているうちに“今度別のメンバーで食事をするんですが、来ませんか?”と誘われて、どんどん現地での人脈が広がっていったんです。最終的には泳ぐホタテを買ってくれるバイヤーやシェフの電話番号をどれだけ知っているかが重要になってくると思いますので、現地でいろいろな方と知り合えたことは大きく、それによって一気に道が開けた気がします。