BrandLand JAPAN

  • Project Report
  • Feb 27th, 2018

伝統木工技術「組子」
欧州需要開拓プロジェクト

事業者:株式会社タニハタ
プロジェクトマネージャー:飯塚真弓

飛鳥時代から続く伝統木工技術「組子」を使用して、現代建築に合った商業施設用の欄間を製作。アジアの吉祥文様18種を駆使した和風の欄間を、フランスを中心としたヨーロッパの建築市場に売り込み、新たな需要を開拓するプロジェクトです。組子という建材をギャラリーに設置する前例のないことに挑んだり、建築雑誌への広告の掲載などを行うことで、サイトへのアクセス数が増加するなどの成果を得られました。プロジェクトマネージャーの飯塚真弓氏が、組子自体がほとんど知られていないフランスでの激動の日々を振り返りました。

目標は期間中に3件の
注文実績をあげること

 フランスを中心としたヨーロッパに組子製品を売り込み、新たな需要を開拓することを目的としたプロジェクトです。期間中に3件の注文実績をあげることを目標としました。進行スケジュールは、8月から10月初旬に販促ツールの多言語化を行い、英語、フランス語に対応した海外向けのカタログとウェブサイトを作成。9月から12月に組子を展示・販売するギャラリーを決定。10月に建築誌に広告を掲載。そして、1月に渡仏し、約3,000社が出展するヨーロッパ最大のデザイン・インテリアの見本市「メゾン・エ・オブジェ」を視察して、今後の方向性を打ち合わせする流れでプロジェクトを進めてきました。また、すべてに並行して、問い合わせや注文へのフォローを行いました。

海外向けカタログでは、
日本の歴史や文化も紹介

 カタログの多言語化に関しては、従来のものをただ翻訳するのではなく、海外を意識した内容を盛り込むことを心掛けました。海外ではそもそも組子について知らない方が多いため、文様や木材の種類、工法など商品にまつわる詳細を掲載。さらに日本の歴史や文化、作り手の思いも含めて、組子の魅力が伝わるような構成にしています。株式会社タニハタのある富山県は5000年前には翡翠を加工する村が存在していた地域。そこから脈々と受け継がれるモノづくりの精神も紹介したかったんです。

 ウェブサイトは当初の予定よりも作業量が大幅に増えたため、最終的に英語版を公開できたのが2018年2月です。増えた作業量とは、翻訳のレベルをあげたことと、日本語ウェブサイトの当初4分の1の予定から全文の翻訳に切り替えたこと。翻訳には1文字単位で金額が課され、翻訳のグレードが決まります。当初ひとつの文章を1人がチェックする形でしたが、それを3人で翻訳・チェックする体制にし、より精度の高い翻訳に仕上がったと思います。

専門誌への広告出稿によって
サイトへのアクセス数がUP!

 広告出稿する媒体は、現地のデザイナーが読んでいる建築専門誌の中から探しました。コストも踏まえると最適な媒体を見つけるのに苦労しましたが、世界のトップデザイナーが作った豪華なインテリアやアート建築が紹介されている『AD-Architectural Digest』のフランス版にまずは試験的に出稿してみることにしました。すると英語版のウェブサイトで、フランスからのアクセス数が明らかに伸びたので、広告出稿の効果は得られたと思います。現在、他の媒体も検討中です。

前例の無いギャラリー展示を
粘り強い交渉の末に実現

 今回、特に難航したのが、組子を展示・販売するギャラリーの開拓です。というのも、アートギャラリーに建材を展示した前例がなく、こちらもギャラリー側も手探り状態だったため、交渉にはかなりの時間を要しました。展示には場所代と売り上げの何%かのコストが通常かかります。何度も話し合い、最後は場所代とのトレードオフで、こちらが卸値を下げたり、ギャラリー内の展示場所を先方の意向にある程度合わせる形で、ようやく18種類の組子を設置できるようになりました。株式会社タニハタは日本でネットワークをもっていますので、ギャラリー側も今後のビジネスチャンスを広げるために、たとえ最初は成果がでなくても、試験的に次を見据えてやっていきましょうと。前向きな展望があったので、一緒に動き出すことができたんですね。

 ヨーロッパにおけるインテリアデザインや内装に関する市場は、ロンドンが中心です。でも、今回はあえてパリをメインにした挑戦になりました。パリはリーマンショックがあった2008年から10年にもわたって不景気が続いています。社会全体が停滞していて、テロもありましたし、労働市場はすごく悲観的な状態です。その影響で建設業界の中でも新築分野はどん底ですが、内装インテリア・改装物件の仕事の需要が増えています。また、フランスでは以前より日本文化に対する理解が非常に高いですが、最近は韓国や中国の文化もかなり人気です。禅に代表されるようなアジア的な静かな生活スタイルは、組子と相性がいいと思いますので、その流れをビジネスチャンスにつなげたいと思います。

無垢材の使用に宿る
クオリティへの矜持

 組子に対するフランス人の反応には、概ね手応えを感じています。フランス人は、この10年間の経済低迷もあって、新しいアイデアを探しているんですね。株式会社タニハタのみなさんをフランスのいくつかの工房にお連れした時に、向こうの職人に組子の施工実績の写真を見せると、ビジネスパートナーとしてすぐに歓迎してくれました。木材を製品化する時は表面にニスを塗ることが一般的で、これによって手垢がつかなくなったり、色の経年変化も少なくなり、クオリティが安定します。しかし、組子は表面に塗装をしない自然のままの無垢材を使っていて、これがフランス人にとっては珍しいようです。無垢材は湿度によって膨張して製品が歪むことがあるので、フランスではクレームの対象になることもあります。いわばリスクを背負った製品ということ。ただ、フランスの職人の方も木材はナチュラルな状態のほうがいいと思っている。だからこそ、無垢材を使用する株式会社タニハタの材料や商材へのクオリティに対する思いが、工房の人たちに伝わったのではないかと思います。

4件が出荷済みで目標達成!
さらに3件が見積もり継続中

 今回のプロジェクトでは、結果的にウェブサイトへのアクセス数が3倍になり、問い合わせ件数も増えていますので、かなりの成果が出ています。注文件数も目標だった3件に対して、終わってみれば4件が出荷済みで、さらに3件が見積もり継続中という予想以上の結果が得られました。今後はとりあえずさらにウェブのアクセス数や問い合わせの件数を増やし、毎月1件以上は注文実績に結びつけたいですね。またEコマースサイトをしっかりと作ってお客様に伝えていくこともしていきたいです。現状の課題としては、大型インテリア建材を販売する時に、法律・構造などの建築設計知識が必要になることがあるので、一般販売員向けの教育マニュアルを作成するか、あるいは専門知識を伴った販売員の配置を検討する必要がありますね。また、パリなどの都市部とそれ以外の地方では、同じフランスでもインテリアのニーズが違うので、組子文様、デザイン、木材などに関する現地の声をエリアごとに細かく拾って、販売に生かしていきたいと思います。

 今後の具体的な目標は、1年目となる2018年7月の段階で毎月1件の注文が入ること。2年目はフランスでの成果を踏まえて、ロンドン、ミラノ、ニューヨークでも展開を行っていく。3年目は生産能力を拡張したい。その場合、日本の工場を拡張するかどうかがカギになると思います。2018年7月から2019年2月までは、日仏友好160周年を記念した総合的な日本文化紹介事業「ジャポニズム2018」がパリを中心に開催されます。日本文化に興味のある方がたくさん集まってくると思いますので、商機ととらえてうまく乗っていきたいと思います。