BrandLand JAPAN

  • Project Report
  • Feb 27th, 2018

ブラッシュブランド
「SHAQUDA(シャクダ)」


動的プロモーション企画

事業者:有限会社瑞穂
プロジェクトマネージャー:小泉堅太郎

広島県・熊野町で生産され、日本の伝統的工芸品に認定されている熊野筆。このトラディショナルな技法と洗練されたデザインを融合し、2015年に誕生した化粧筆ブランドが「SHAQUDA(シャクダ)」です。今回のプロジェクトでは、機能や体験価値を訴求する海外販促のための新たなプロモーション表現の開発を目指しました。そのためにブランドとしてこれまでにない取り組みを行うなど、プロジェクトマネージャーの小泉堅太郎氏が、コミュニケーションツールの開発秘話を語りました。

すでに確立されているブランドを
さらなる成功へと導くために

 シャクダは、デザインがよく、すでに海外のセレクトショップやデパートでも扱われている化粧筆のブランドになります。ネットにも取り上げられたり、テレビでも紹介されています。つまり、すでに完成されているブランドなんですね。なので、その上でこれまで積み上げてきたものを損なわずに、プラスαの方向性を見つけるのは大変な作業になりました。

 当初は10月までに施策を決定し、それに基づいたPR・コミュニケーションツールを11月から12月に制作。完成したものを1月から2月にリリースして効果測定を行う予定でした。しかし、実際は1月半ばまで施策を検討し、それ以降、ランディングページや映像、リーフレットなどを制作。デザインができあがりしだい、ウェブサイトへのアップや印刷を行うスケジュールになりました。実はシャクダを展開する有限会社瑞穂が会社の転換期を迎え、方向性が二転三転したため計画よりも遅れてしまいましたが、結果としてよりよい方向に進むことができたと思います。

足りなかったユーザー側の視点
徹底したリサーチを敢行

 これまでのシャクダは、ターゲット像を推測で設定していたり、ブランドの訴求に関しても、クラフツマンシップや熊野筆の歴史やこだわりを中心に打ち出す、つまりは作り手側の視点から行っていました。しかし、これではイメージ先行になりがちで、機能や体験価値などユーザー側の具体的なベネフィットについての説明が足りなかったんです。そこで実際にシャクダの筆を使った時のベネフィットをリサーチすべく、ユーザーから話を聞く方向に転換。消費者パネル会と称して、複数の消費者やユーザーに集まってもらい、ブラシを使った感想を聞くなどして、いいことも悪いこともすべて正直に話してもらいました。さらに店頭でのお客さんの反応を販売員にリサーチするなど、ユーザーの生の声を徹底的に集めました。そして、その結果をコミュニケーションツールの制作に反映させることにしたのです。

 例えば、シャクダには20本近い化粧筆のバリエーションがありますが、タイプの違うそれぞれの筆が、どの化粧品素材やコスメ素材に適しているのかを言及したり、シャクダ・ブランドの入り口として使ってもらいたいエントリーモデルを設定して紹介することにしました。その結果、これまでのブランドイメージやフィロソフィを損なうことなく、ユーザー目線で商品の良さを訴求できるプロモーションツールをつくることができました。これは当初の予定になかった、ユーザーの声に耳を傾けるという段階が加わったからこそだと思います。

コミュニケーションを改善
思いを理解した上で使ってほしい

 雑誌への掲載や展示会、デパートの店頭などでも、以前であれば商品をズラッと並べて見せていました。でも、今後は、例えば、“この1本から始めてみませんか?”というような、これまでとは違うコミュニケーションの仕方を詰めていく必要があると思います。

 シャクダの筆は、今の生産体制だと数を増やせないので、やみくもに販売するというよりは、ブランドのフィロソフィや思いを汲み取ってもらった上で使ってもらえる人に、確実に届けたいと思います。筆が1本1万円ほどと高価なので、ターゲットは、欧米やロシアを中心に、感度が高くて金銭的な余裕のある方。欧米も市場の状況は日本とほとんど変わりません。もともと化粧はヨーロッパが発祥で、お金をかけることが根付いているので、特にパリやミラノは化粧筆が高価であることが障害にはならないんです。

ユーザーに近い人たちを取り込み、
共感を伴う訴求を

 今回、難しかったのは、ブランドの思いをどうやって実際にPRとして形にしていくのか。消費者と距離を置いた形ではなく、ターゲットに近い人をPRサイドに取り込みながら行っていくことが効果的だと考え、世界的なメイクアップアーティストであるタイのインフルエンサーを活用してPRを行いました。今後はイタリアやフランスなどターゲット国にアンバサダーを立てて、その人たちのSNSではなく、シャクダの公式サイト上で商品の普及活動に協力してもらおうと思っています。ランディングページでは、コスメ業界にとらわれず、ファッションデザイナーなど第一線で活躍する女性にフォーカスしたインタビュー記事を掲載し、これまでにないシャクダの方向性を印象づけていきたいと思います。

 もともとシャクダはそれほどメイドインジャパンを押し出しているブランドではありません。一般的に日本のメーカーでは、国内と海外ではPRのトーンが変わってくるとおもいますが、シャクダの場合は世界で戦っていくことを前提に、無国籍的なブランドの打ち出し方をしているため、日本と海外でトーン&マナーを変えていない。例えば、制作物をつくる時に、外国人がイメージする日本、つまり琴の音や日本庭園の映像を使うというよりは、日本の凛とした空気感のようなものを商品やPRに落とし込んでいます。モデルも外国人を起用。そのため、シャクダの筆を見た人が“どこの国の筆だろう?”とか、“どういう人が作ってるんだろう?”と、第一印象で興味を持ってくれて、そこから“日本の広島県にある熊野地方で職人さんがつくってるんだ!”と認知してくれたらいいですね。

コミュニケーションを密にとれば、
物理的な距離は問題なし

 プロジェクトを進めるにあたって少し心配だったのは、有限会社瑞穂と我々の物理的な距離です。瑞穂が広島で我々が東京。電車で4時間半ほどの距離がありましたので、顔を合わせるのは月に1度ほど。あとは電話やスカイプ、メールなどでのやりとりになりましたが、振り返ってみれば、ほとんど問題はありませんでした。距離があってもお互いに密にコミュニケーションをとることで、プロジェクト自体は進むべき方向に進んだと思います。

 結果的にこれまでシャクダがタッチしていなかった部分、足りなかったピースとして、ユーザー目線を踏まえ、機能や体験価値を訴求するコミュニケーションツールを制作できたことはよかったと思います。今後は新たなPR手法をどんどん考案して、チャレンジしていきたい。実際に効くのかどうかは、計画、実行、評価、改善のPDCAを回していかないとわかりませんが、うまくいけば継続して、ダメなら別のやり方を模索するなど、柔軟に対応しながら進めていきたいと思います。