BrandLand JAPAN

  • Final Report
  • March 1st, 2019

AKERU PROJECTで欧州にチャレンジ

事業者名:株式会社岩嵜紙器
プロジェクトマネージャー:CL1979/永田光央

紙に特殊な加工を施して耐久性を向上。繰り返し使うことのできる紙製のパッケージを製造する岩嵜紙器が、AKERU PROJECTとしてデザイン性の高い紙製のバッグや雑貨などを制作。フランスを中心としたヨーロッパ諸国に販路を拡大するプロジェクトです。

すでに国内では流通しているAKERU PROJECTの製品。この販路を海外へと拡大するにあたり、既存の製品に加えて、海外向けの新たな製品が必要だと考え、9月上旬にパリで行われるインテリアデザインとライフスタイルの国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」に間に合うよう、商品開発を行っていきました。我々は海外での販売が未経験だったため、岩嵜紙器とつながりのあった、パリにショールームをもつエービングプラス社の協力を得て、進めることになりました。

「メゾン・エ・オブジェ」に向けて、つまりはヨーロッパ市場で展開する新製品を開発するにあたり、我々は2つのコンセプトを定めました。1つはフランスをはじめとするヨーロッパ諸国のニーズに応えた製品。もう1つは日本らしさや、岩嵜紙器の良さを打ち出した製品です。

1つめですが、まずはニーズを探るためにエービングプラス社の青木千映氏に市場調査をしていただきました。その結果、フランスでは感度の高い人たちを中心に弁当が流行っていると聞き、それを製品のデザインの要にすることになりました。具体的にはバッグとポーチを作ることになり、青木氏と相談しながらサイズ感やデザインを決めていきました。バッグはトートバッグのような形で、ストラップによる肩がけだけでなく、バッグの上部を丸くくりぬき、そこに木製の取っ手をつけて、手持ちもできるようにしました。取っ手部分にはロゴマークを箔プリントで入れて、高級感も出しています。ファッション大国であるフランスでの販売を目指しているので、こうしたこだわりはわかってくれると信じて、ディテールにも力を入れました。

ポーチは弁当箱が入る、少し大きめのサイズ感でデザインしました。例えば、持ち物が弁当箱だけならポーチを使い、水筒など弁当箱以外のものがあれば、トートバッグを使うというイメージで2タイプの制作に至りました。とはいえ、どちらも弁当箱専用ではないので、アメニティグッズなどを自由に入れて使うことができます。

もう1つのコンセプトである、日本らしさと紙の良さを踏まえた今までになかった製品ですが、熟慮した結果、風呂敷を作ることになりました。なにかを包むための風呂敷であれば、耐久性のある紙の特徴を生かすことができると考え、デザインに取り掛かりました。風呂敷はモノを包むだけでなく、敷物にもなりますし、結果的に弁当にもつながります。ただ、紙でできた風呂敷自体は、これまで販売されていないことでもおわかりのように、一般的な消費者のニーズに応えるものではないのかもしれません。でも、ヨーロッパで弁当が流行っているというタイミングや、日本の紙器屋からの提案ということで、興味をもっていただける可能性はある。そして、これが成功したら国内でも使えるアイテムになるかもしれないと思い、風呂敷の製品化を決めました。

9月の展示会までは2か月しか時間がなく、素材やパーツ選び、サイズの確定など、決めることが目白押しだったため、「メゾン・エ・オブジェ」には間に合わず、現地にはサンプルとしてプロトタイプを持っていきました。パッケージはサンプルも間に合わず、上代設定もできていないなど、不備はありましたが、とりあえずはプロトタイプであれ、形になったものを展示できたことはよかったと思います。

出展ブースのデザインも、エービングプラス社の青木氏にアドバイスをいただいて制作しました。今回ヨーロッパで展開する製品以外の紙製の鏡や壁掛け時計などもディスプレイに使い、自社製品で世界観を統一。岩嵜紙器らしさを演出しました。組み立てる前の開いた状態のボックスやパーツを壁に飾ることで、工場まで抱えるファクトリーメーカーであることもさりげなくアピールできたと思います。また、パッと見て日本製品のブースだとわかるように壁には岩嵜紙器の名前をあえて漢字で記しました。日本から出展しているほかのブースでもやっていることですが、アドバイスをいただいたこともあり、ここは素直に右にならいました。

我々にとって意外なところで追い風となったのは、世界的に話題のプラスチック製品のゴミ問題。デザインに興味をもってブースに来ていただいたお客様やバイヤーの方が製品を手にすると「軽いね! 素材はなんですか?」という流れに。紙だと伝えると、脱プラスチックに対して意識をされている方には、さらに興味を持っていただけました。また、青木氏が「メゾン・エ・オブジェ」のデジタルプラットフォームにあたる「メゾン・エ・オブジェ・モア」に我々の製品をエントリー。このサイト内でバイヤーによるベストセレクションに選定され、それを機にまた注目していただけたことも良かったですね。

「メゾン・エ・オブジェ」以外にも、同時期にパリ市内で開催されたデザインウィーク期間中に、セレクトショップの「Mark Style Tokyo」や「JAPAN BLUE PARIS」、ショコラティエの「Les Trois Chocolats」で商品を展示。いずれも感度の高い人たちが集まる店ばかりで、みなさん、紙製品ということに驚かれているなど、良い反応が得られました。さらにはエービングプラス社のパリのショールームにサンプルを置かせてもらったり、同社が別の展示会に出展した際に、他社の商品と一緒に我々の製品をおいてもらうなど、継続的な露出を行っていきました。

その後、1月の「メゾン・エ・オブジェ」では、9月の展示ブースやショールームでの展示を見たというお客様がいらして、成約に至ることができました。日本であれば、製品を気に入ってもらえたら1回の商談で成約できますが、ヨーロッパの方は慎重で、2度、3度、時間をあけて製品を見ていただいてようやく成約に結びつくことが多いので、露出を続けることが大切だと実感しました。製品のディテールに気づいて褒めていただいたり、感動してくれたことも多かったので、見る目が厳しい反面、こだわって作った部分に正当な評価をしてもらえたことは、自分たちの製品が世界でも通用するという自信にもつながりました。

今回のプロジェクトでの反省点は、前述したように9月の「メゾン・エ・オブジェ」にプロトタイプで出展したことですね。やはりできれば完成した製品を持っていきたかった。それから上代が未設定で、日本からの送料を把握しないまま商談に臨んだため、安価な金額を提示してしまったのは、完全にミスでした。それと岩嵜紙器は工場も所有するファクトリーメーカーであるがゆえに、商談の中で、ある製品の色を別注したいという相談を何件かいただきました。しかし、事前にどの製品をどれくらいの個数で別注したら、コストはどのくらいかかるのかという数字を出していなかったため、その場で返答ができなかった。そこですぐに対応可能な最低個数と金額を伝えられたら、スムーズに成約につながるかもしれないし、その場で成約できなくても、金額が提示できれば、その後に検討していただけるかもしれない。今後の課題として、早急に対応していきたいとお思います。

色に関していえば、ヨーロッパではスモーキーカラーと呼ばれる、やわらかいキレイな色が人気で、市場でもウケがいいと言われています。それを聞いて、我々の製品にも取り入れようと思いましたが、結局そこまではしませんでした。特に今回の新製品は、サイズなどをヨーロッパのニーズに合わせて作っています。その上で色まで現地のニーズに合わせたら、わざわざ日本から輸出する意味が薄れますし、そもそもすでにヨーロッパにあるものを買えばいいということになってしまうからです。なにからなにまで現地のニーズに合わせるのではなく、日本らしい、自分たちらしいものを出していくことが大切だと思いますし、今回は結果的にその方向で進めて正解でした。

今後は引き続きエービングプラス社のショールームを使わせていただき、ポップアップショップのような、より目立つ形での展示を予定しております。その際は3つの新製品の完成品や、パッケージなどすべて揃ったものを打ち出していく予定です。その後、2019年9月の「メゾン・エ・オブジェ」への出展を検討中です。やはり今回、2018年の9月と2019年の1月と継続して出展したことへの効果を感じましたので、これをさらに続けることに意味があると思いますし、続けるからこそ成約にもつながるんだと感じています。 

PROJECT DETAIL