BrandLand JAPAN

  • Final Report
  • March 1st, 2019

日本刀の聖地を巡る
SAMURAIツアー造成

事業者名:Eighty Days株式会社
プロジェクトマネージャー名:株式会社まるかじり/柳瀬武彦

かつて300人の刀職人が集結した岐阜県関市は、分業による刀作りで全工程の職人が残る唯一の町。非日常の文化的体験を求める欧州のミレニアル世代をターゲットに、この町の日本刀作りを軸にした侍文化を体験する「ラグジュアリートラベル」の提供を目的としたプロジェクトです。

今回のプロジェクトで最初に取り掛かったのは、SAMURAIツアーの細かい内容を詰めていく作業です。実はBrandLand JAPANにエントリーした時点では、細かい行程が未定の状態。商品の内容、つまり一番大切な部分が決まっていなかった。そのため開始してすぐに関市の職人たちと話し合い、ツアーの具体的な内容を確定する作業を進めました。

あまり知られていないと思いますが、日本刀をつくる職人である刀匠はひとりではありません。鉄を刀に加工する刀鍛冶や、柄(つか)と呼ばれる持ち手部分を作る柄巻師、刀を収める鞘(さや)を作る鞘師など、刀の部分や作業の段階別に5人の職人がいます。そこで今回のツアーでは、この5人の工房を順番に回って刀ができる行程を見学。さらに居合斬りや座禅の体験、鵜飼いの見学やうなぎを食べるなど、江戸時代の侍がしていたようなことを日本の文化として体験してもらうことも含めた、ひとつのパッケージとしてツアーを形成することにしました。

その上で9月下旬に東京ビッグサイトで開催された「VISIT JAPAN Travel & MICE Mart 2018」に出展。これは海外の訪日旅行取扱旅行会社と日本全国の観光関係事業者が集まり、様々なインバウンド関連ビジネスを創り出す商談会になります。この出展にあたってはプロモーションツールとして、パンフレットとイベント用のポスター、映像の3つを作りました。8月上旬に現地でロケハンを行ったのち、同月下旬に4日間かけて撮影を行い、2週間ほどでプロモーションツールに仕上げました。限られた時間内でクオリティの高いものが完成し、「VISIT JAPAN Travel & MICE Mart 2018」に来場されたお客様からの評価も上々。そのおかげか結果的に20〜30社と商談を行うことができました。ちなみにパンフレットの制作部数は今後も考慮して2000部ほど。展示会では300部程度を配布しました。

好評をいただいたプロモーションツールですが、制作にあたって気をつけたポイントは、今回のツアーがすでに何度か日本を訪れている海外のラグジュアリー層に向けたものなので、筆文字のJAPANや日の丸などのよくありがちな日本的な演出やデザインは、飽きられているんじゃないかってこと。そこでもう少しスマートに、リアルな日本をそのまま見せる方向で制作することにしました。

また、今は旅に出る前になんでも調べられる時代ですし、旅の魅力を伝えようとするあまり、プロモーションツールであまりに現地の様子などを説明しすぎてしまうと、実際に旅をした時に写真や映像で見た光景を肉眼で確認するだけになってしまう。当然、感動も薄れてしまうので、プロモーションツールでは説明を最小限におさえるよう心がけました。それから関市にあるお寺や池などの観光名所を紹介することもやめました。その理由は一般の旅行ガイドブックのような見え方になってしまうから。それとの差別化も含めて、今回のプロモーションツールでは、イメージや世界観を伝えることに注力。具体的な細かいことに関しては想像させるくらいにおさえ、あとは来てのお楽しみくらいの内容にまとめました。

こうしたプロモーションツールがあると、展示会に堂々と出展することができますし、自信にもなります。特に観光や旅行は、家具などと違って商品そのものが形になって目の前にあるわけではないので、それをどう伝えるのかが重要です。そういう意味でも、見た人がイメージをうまく広げられるようなプロモーションツールを作ることが大切だと思います。とはいえ、あまりに抽象的すぎても伝わらないので、朝日から始まって、昼になり、夜になりという感じで、映像がひとつの旅の体験になるような演出は施しています。また今回はヨーロッパを意識してプロモーションツールを作りましたが、アメリカ、ヨーロッパ、アジアでは文化も違うため、可能であれば、プロモーションツールは国別に分けて作るくらいのほうが、より引きの強いものができると思います。

そして、12月初旬にはフランスのカンヌで行われた「ILTM Cannes」に出展しました。ILTMはInternational Luxury Travel Marketの略で、富裕層旅行業界で最大級のイベントです。おもにヨーロッパの旅行代理店が集まります。実はEighty Daysは、海外の展示会に出展するのは初めてで、手探りな部分もありましたが、約30社と商談を行うことができ、学びも多かったように思います。意外と香港からの問い合わせが多くあり、今回は含めていませんでしたが、今後は香港やシンガポールなどアジアの富裕層もターゲットになりそうな手応えをつかむことができました。

9月の「VISIT JAPAN Travel & MICE Mart 2018」と12月の「ILTM Cannes」の2回の展示会で商談を行なったのは、計50〜60社。ある程度興味を持っていただけるところまでは想定内で進んでいましたが、そこから契約までに思いの外時間がかかることは想定外でした。メールや電話でやりとりを行なっていますが、ターゲットに据えた海外のラグジュアリー層について、我々が当初思い描いていたイメージは、東京から京都へのゴールデンルートには飽きていて、それ以外の知らない場所に行きたい人たち。でも、実際には「関市から京都に行くにはどうすればいい?」など、ゴールデンルートの途中で関市に立ち寄りたいというニーズが多かった。これもまったくの想定外でした。そこで12月に商品の提案方法を変更。すべてがカチッと決まったものを売るのではなく、7割ほど決めておき、3割は臨機応変に変えていくスタイルに変更しました。幸い関市は名古屋から車で1〜2時間程度。さほど無理なくゴールデンルートに組み込めるのはよかったですね。

また、取引先に関しても途中で変更を行いました。最初はBtoCで、Eighty Daysのウェブサイトからお客様個人で予約してもらう予定でしたが、展示会などの反応を踏まえて、2018年の秋頃には、海外のエージェンシーと組んで国ごとに販売するBtoBに集中することにしました。そして、2019年の春には1回目のツアーを実行できるよう、今、準備を進めています。商談先からは「宿泊先にベッドはないのか?」とか「夕食メニューはどんなものか?」などの細かい問い合わせが多いので、1回でも実行してしまえば、それが既成事実としてある種のパッケージになりますし、現地の受け入れ体制としても同じことを繰り返せばいいとわかるので、かなり負荷は下がるだろうと思います。

今回はEighty Daysにとって初めての海外の展示会出展だったこともあり、事後に初めてわかることがたくさんありました。細かい調整ごとももう少しうまく行うやり方があるはずです。例えば、展示会での商談時に、食事やホテルなど旅の要素ごとにカードを用意。つまりは、夕食はうなぎなのか、すき焼きなのか、複数のカードの中から興味のあるものを選んでもらい、それを組み合わせてツアーを組んでいくとか、もしくはiPadなどを使って行程表をその場で作れるようにしておけば、その後のメールや電話でのやりとり何回分かはその場の数分で終わらせることができる気がします。

ラグジュエリー層は、極端な言い方をすれば、わがままなお客様が多いので、それに応える形でツアーを行うためには、準備期間も必要だし、人件費もかかってくる。でも、1回ずつその時のお客様に合わせてゼロからツアーを作っていく形では利益は見込めない。将来的にはA、B、C、Dくらいのパターンをつくって、そこから選んでもらうような形でツアーを形成できればと思っています。

今後はSNSなどを通じたオンラインのプロモーションも検討中ですが、特に刀剣好きなコミュニティーの見つけ方、つまりはどこにどのような広告を打てば、ターゲットは見てくれるのかを探っていきたいと思います。欧米ではLinkedInというビジネス向けのSNSにアカウントをもっている人が多いので、そこにEighty Daysアカウントを作ったり。例えば、ドイツとフランスでもライフスタイルが違えば、SNSなどへの接触頻度やスタイルも違うと思うので、すぐには難しいかもしれませんが、それらを少しずつ把握していくことができれば、より精度の高いプロモーションにつながっていくと思います。

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