BrandLand JAPAN

  • Project Report
  • Feb 27th, 2018

桐箱、桐製品の海外での事業展開

事業者: 株式会社増田桐箱店
プロジェクトマネージャー:大滝敦

桐箪笥や桐箱に代表される桐製品をアメリカで販売するプロジェクトです。これに挑んだのは、1929年創業の桐箱製造会社、増田桐箱店。今回は既存の商品に加えて、アメリカ市場を踏まえた新商品の開発、販売にも取り組みました。調湿性や防虫性に優れ、クッション性が高く軽量であることから、日本では高級品として知られていますが、アメリカで受け入れられる可能性はあるのでしょうか? プロジェクトマネージャーの大滝敦氏が語りました。

国内では桐離れが進む中、
アメリカでの市場創出をめざす

 増田桐箱店はOEMをメインに、人間国宝の作品や国立博物館に収蔵された作品の収納ケースから、お酒やお菓子のギフト用の箱まで、さまざまな桐箱を作っている会社です。かつて桐は箪笥などに使われ、家庭や生活に溶け込んでいましたが、時代の移り変わりとともに桐離れが進んでいる昨今。増田桐箱店では、もっと桐に触れてもらい、身近に感じてほしいとの思いから、国内のコンシューマー向けの桐製品をつくるようになりました。

 今回のプロジェクトは、アメリカ向けに桐を使った新商品を開発し、現地で桐のブランドを確立すること、そして、新商品を米びつなど既存の商品とともに販売して、プロジェクト期間中に500万円の売り上げを計上することが目標です。向こうで木材といえば、オーク材やウォールナット材が中心なので、桐製品がアメリカでどのように受け入れられるのかのリサーチも兼ねて行いました。

 そのための戦略として採用したのが、プラットホームとなる店舗での販売を中心に桐製品を広めていくこと。基点にしたのは、ロサンゼルスのトータス ジェネラル ストアで、アメリカ西海岸にあるライフスタイルストアのベンチマーク的存在の店になります。15年にわたり日本のクラフト製品を扱っていて、波佐見焼の海外ブランド化プロジェクトを成功に導くなど、日本の地域産業の商品をブランド化することに長けています。そこで、この店のマネージャーであるハーバート・ジョンソン氏(現トータスエージェンシー代表)とともに、現地での価格設定をはじめとするさまざまな戦略を練っていきました。

米国西海岸に土鍋ブームを
巻き起こした店でテスト販売

 最初に取り組んだのは、既存商品である米びつのテスト販売です。ジョンソン氏によれば、今、アメリカ人にとっての日本食が進化。かつては外食として店で食べるものでしたが、最近では家で作って食べる人が増えているとのこと。その結果、西海岸では土鍋ブームが巻き起こりましたが、それを仕掛けたのがトータス ジェネラル ストアなのです。その流れで現地では米が売れているため、それを保存するための米びつも売れるという推測をもとに、販売を行いました。アメリカはホームパーティの文化があるので、友人知人を家に招いた際に置いてあるだけで絵になりますし、ビニール袋から米を出すのではなく、オシャレな米びつから出したくなる。そんな現地の文化や習慣も踏まえた戦略でもあります。

 すると米びつは予想以上に好調な売り上げを記録。さらにトータス ジェネラル ストアから販売をスタートできたことで、ライフスタイルストアのベンチマーク的存在の店から“価値を認められた商品”としてブランド価値が上がり、他店での扱いが始まるなど拡販もうまくいきました。するとこうしたアメリカでの評価、実績がセールスツールとなり、アジアやヨーロッパからのオーダーにもつながっていきました。海外において最初に販売する店はかなり重要だと実感する出来事になりましたね。

アメリカ向けに新商品を開発し、
ポップアップイベントでお披露目

 また、並行して進めたのが、ワインなどのギフト用ボトルケース、サプリケース、切溜風のトレイなど6つの新商品の開発です。しかし、米びつの販売に注力しすぎて開発が遅れてしまい、お披露目となったポップアップイベントを現地で開催したのが2月中旬になってしまいました。そのためプロジェクト期間内にブランドを確立するまでには至りませんでした。その原因は、販売と開発を一緒のチームが担当していたためです。販売と開発を別のチームにすれば、ブランドの確立まで行えた可能性はありましたので、ここだけが今回のプロジェクトで少し残念だったところですね。

桐の特性を生かした食品保存容器か?
会社が得意とするギフトボックスか?

 今後に関しては、アメリカで木材といえば、ウォールナット材かオーク材で、桐材自体がないため、これから新たな市場を創出できる可能性があると思います。桐は調湿や防カビ、防虫効果のある素材なので、それを生かして食品の保存や、着物など大切なものを収納するために使えることが訴求できます。香りもありませんし移り香もしないので、お茶の葉やコーヒー豆の保存にも適していると思います。だからこそ、桐製品を食品保存容器というテーマでブランド化したいという思いがありますが、まだ方向性を見極められていません。

 というのも、増田桐箱店はもともと桐箱の装飾を行っていた会社です。例えば、商品を立派に見せるためのラッピング、つまりギフトボックスは得意なんですね。実際、新商品のポップアップイベントを行った際に、トレイやサプリケースだけでなく、ギフト向けワインケースへのオーダーもかなり入ったんです。しかもアメリカにはギフトマーケットはあるのに、日本みたいな包装がないし、あっても日本に比べて雑なことが多いんです。だから例えば、ワインを贈る時に、ボトルを袋に入れたりリボンを巻くだけではなく、桐箱に入れると丁寧で厳かに見えます。それが日本文化と一緒に伝わっておもしろいと思ってくれたり、トレンドとして流行ってくれたらいいですよね。ギフトマーケットの数%をとれるだけですごく大きなマーケットになりますから。そのため、今後は商品の幅を広げてラインナップを増やした方がいいのか、もしくは食品保存のための商品であることを強く打ち出すことで、桐の特性をしっかり訴えていくほうがいいのか検討をしている最中です。

戦略がハマり、目標の2倍にあたる
1000万円超えの売り上げを達成!

 今回はトータス ジェネラル ストアを中心にプロジェクトを展開してきましたが、店ではエンドユーザーと直接話ができて、ひとりひとりに訴えられるものは強いんですが、広がりはなかなか生まれません。そのため、食のインフルエンサーの方などに桐をよく理解してもらって広めてもらうとか、食のメディアなどに取材してもらうことが必要です。今後、桐のブランドが確立されたら、外への広がりにも取り組んでいきたいと思います。

 プロジェクト全体を振り返ってみると、期間内での売り上げ目標500万円に対して、最終的に1000万円以上の売り上げを達成できました。また試験的な商品とはいえ、新商品を作って、それを買ってもらえたことも大きいですね。ニーズを掘り起こせる可能性があることがわかりました。戦略がハマったことは間違いないと思います。

成功の最大の要因は、
良いパートナーに巡り会えたこと

 成功できた一番の要因は、良いパートナーに巡り会えたこと。やはりモノを海外で販売していくためには、現地でモノの価値を伝えてくれる代弁者がいるかいないかは大きい。私たちの言葉を単に翻訳するのではなく、その根底にあるマインドを伝えてくれることが重要です。現地の人たちはその商品をどう見ているのか? どういう言葉であれば伝わるのか? これをちゃんと考えてくれる人が最適だと思います。今回、私たちは、モノ、基点となる場所、人の3つを重視して、トータス ジェネラル ストアとパートナーを組みました。やはり、会社の大きさとか活躍しているかどうかだけでなく、自分に合う人、マインドを共有できる人を、例えば、野菜が商品であれば、ファーマーズマーケットに通ったりしながら、いろいろな人と会話をするうちに見つけられるといいですね。

 今後の目標は、今回やり残してしまった桐ブランドの確立です。桐というブランドを固めていきたい。将来的にアメリカではどこの店にも桐製品が並んでいるような状況を作りたいと思います。そして、ハリウッドセレブが当たり前のようにワインを桐箱に入れてプレゼントしたり、一般家庭でパンの保存容器として使ってくれるなど、日常生活になじんでほしいと思います。日本の桐製品のおかげで自分たちの生活が変わった、桐と出合って良かったと実感してくれたら嬉しいです。これからもプロジェクトを継続し、3年後には売り上げ1億円を目指します。