BrandLand JAPAN

  • Project Report
  • Feb 27th, 2018

白河だるまの
商品開発・台湾市場での新規販路開拓

事業者:有限会社幸栄
プロジェクトマネージャー:木村晋平

その歴史は、江戸時代、寛政年間よりおよそ300年。白河だるまは、福島県を代表する県指定の伝統的工芸品であり、また縁起物としても長年にわたり多くの人々に愛されてきました。このプロジェクトは、だるまを台湾で販売すべく、販路の新規開拓を目指して行われたもの。約12万人のクリエイターが登録する日本最大級のハンドメイドマーケットプレイス「Creema(クリーマ)」とのコラボによって、これまでとは異なるアプローチを行いました。果たして、現地の反応はどうだったのでしょうか? プロジェクトマネージャーの木村晋平氏が、白河だるまにとって挑戦的な取り組みとなった今回の成果について語りました。

頭打ちの状況を打破すべく、
新たなターゲットの開拓へ

 今、国内市場では、だるまの売り上げが頭打ちで、特に若い人向けの販路が広がっていかない状況に陥っています。急に販路を広げると言っても、商品の特性上“スーパーで売りますか?”みたいな話になってきてしまい、今後の展開が見えない状態が続いていました。そこで視点を変えて、国内外ともにモノづくりや手仕事など、工芸品に興味がありそうな層をターゲットにするのがいいのではと考え、また、台湾でそもそもだるまが売れるのか? ということを見てみたいという思いもあり、今回、有限会社幸栄さんとご一緒させていただきました。

 このプロジェクト最大の目標は、赤いだるまを売っていくこと。もちろんそれ以外にも白いだるまやカラフルなだるまなど、いろいろなラインナップがありますので、こんなにおもしろいだるまもあるんだ! という話題喚起も同時に行いました。

モノづくりのクリエイターに
コラボだるまの制作を依頼

 最初に実施したのは、我々が運営するハンドメイドマーケットプレイスCreemaに登録している、モノづくりのクリエイターたちに呼びかけた企画でした。サイト内で展開する“逸品”と“作り手”を国内外に発信していく「全国いいもの発見プロジェクト-日本の逸品×作り手-」の企画のひとつになります。赤いだるま、白いだるま、下塗りする前のだるまを、素材としてつくり手のみなさんに渡して、色塗りやデコレーションなどを自由にやってもらい、いろいろなだるまをつくってもらいました。この企画には100人強の応募がありまして、選考の結果、最終的におよそ40人のクリエイターにコラボだるまの制作をお願いしました。そして、完成した40種類ほどのだるまを、通常のだるまと一緒に台湾で開催したCreema主催のイベント「Creema Craft Party in Taiwan」に持っていったんです。

イベント来場者の反応から
だるまの売り方のヒントを得る

 イベントを開催したのは2017年12月2日(土)、3日(日)で、2日間の動員は約2万人ほど。モノづくりに興味のある多くの人が訪れたこの会場でだるまを展示販売して、お客様の反応や売れ行きをチェックしました。コラボだるまは国内、台湾含めて話題としてはおもしろいんですが、クリエイターが1点ずつ手作りするため、商売として成り立ちにくく、今回はサンプルとして展示して、ほしい方にはサイトからの購入を促すことに。そこで個性的なだるまたちをアイキャッチにしてお客様に来ていただき、ほかにもいろいろなだるまがあるんですよということで、だるまの売れ行きをリサーチしました。コラボだるまをきっかけに、レギュラーで販売しているだるまをどうやって台湾に売っていくのか? どのだるまが一番評判がいいのかを調べたんです。やはり現場でお客様の反応を見ると、売り方に対するヒントがたくさん得られますね。

 例えば、今回、最も売れたのは干支をモチーフにしただるまでした。2018年は戌年なので戌をモチーフにしたものと、2017年の干支である酉をモチーフにしたものを販売したところ、合わせて約150個が完売。生まれ年の干支は売れるのかなど、もう少しリサーチが必要ではありますが、干支のだるま自体は非常に反応が良いことはわかりました。実感としては、生まれ年よりもその年や翌年の干支のほうが売れそうでしたね。

特に若者には、だるまの意味を
伝えることも重要

 また、だるまの意味を伝えていくことも重要だということがわかりました。ポップなどを使って、だるまにはこういう意味があって、願をかけてそれが叶ったら両目を描き込むものだと説明してあげると、そうなんだと言って、若い方が買っていきました。説明がなければ、起き上がり小法師くらいにしか思わないんじゃないかと思います。逆に50代以上で、すでにだるまのことを知っている方は、チラっとは見るんですけどなかなか買われない。価格は赤いだるまが700円から800円ほど。干支のだるまは900円ほど。購入された方の約8割は40代前半までの方で、20代、30代が中心でした。

風水のだるまも人気で、白河だるまでは7色作っているんですが、多くの方に7色すべて欲しいと言っていただきました。特に何色が人気というわけではなく、全色セットが人気というのもおもしろいですね。実際に販売するとしたら、バラで売るよりもセット販売のほうが、売り上げが伸びそうです。

台湾では、ブームをつくるのではなく、
地道にやっていくのが鉄則

 台湾や香港では日本のハンドクラフトは人気が高く、「Creema Craft Party in Taiwan」でも、ほぼ終日、入場制限がかかるくらい多くの方にご来場いただきました。工芸品であるだるまに関しても、今後うまくいきそうな手応えをつかむことができましたね。今後ですが、台湾ではブームをつくってしまうと、日本の4倍速でわーっと広がって、16分の1くらいの期間で終わってしまうと聞いています。というのも、マーケット規模が日本の4分の1程度しかないので。地に足のついた形で、地道にやっていくことが重要になってくると思います。その意味では「Creema Craft Party in Taiwan」で戌と酉を販売した干支のだるまは、残りのすべてをそろえるまで10年スパンで展開していけるのがいいのかなと思います。干支がこんなに受けるなんてことは、日本にいる時には想定していなかったです。単純に赤白のだるまだけではなくて、それをアレンジして干支がモチーフになっている。しかもそこに願掛けをするという台湾の方が喜びそうな要素が含まれていることがよかったのかなと思います。

一方、日本では、これまでだるまを買いたいと思っても、どこで売られているのかご存じない方がほとんどでした。実はインバウンド向けに成田空港や羽田空港の土産物店などで売られていて、これはこれで重要でしたが、最近オシャレな書店など意識の高い外国の方が訪れそうな場所でも販売してみたところ、日本の方にもかなりご購入いただいております。もっとだるまについての説明を行えば、日本でも売り上げが伸びる可能性があるはず。今回の目的は台湾での販路開拓ですが、その結果を日本での販路拡大にもじょじょに繋げていけたらと思います。

デザインを募集したところ、
思いもよらない事態が発生!

 当初の計画はほとんどが順調に進みましたが、唯一想定外だったことは、「全国いいもの発見プロジェクト-日本の逸品×作り手-」の際に募集していたもうひとつの部門が、商業ベースでは難しかったことです。内容はクリエイターにだるまの絵柄を考えてもらって、それをだるま職人が描くというもの。前述のコラボだるまは、クリエイターが制作を行いますが、これはこちらで制作を行うため、生産に関してコントロールができるし、量産もできるという期待を込めて募集を行ったんです。ところが、実際に応募された作品を見ると、エッジの効いた作品が多くて、職人さんでは描くことが難しかったり、描けたとしても仕上げるまでに時間がかかってしまう。そうなると生産できる数が少なくなり、効率が悪くなってしまいます。もちろん話題づくりという点では効果的かもしれませんが、実際に販売していく場合、どういうやり方がいいのか、今後、考えていきたいと思います。デザインを募集するのは、なかなか大変なことだと今回やってみて勉強になりました。

 今回、さまざまな施策を行った結果、だるまに対してある程度の反応がありましたので、現在はそれをもとに、2018年の年末に向けて戦略を練っているところでございます。台湾でオシャレな若者が訪れそうなお店を展開する小売4社と、だるまの販売についてのお話も始めています。

かわいい、オシャレという
方向からのアプローチ

 実はCreemaのサイトでは、だるまが日本人にかなり売れておりまして、だるまの持つ可能性を実感しているところです。これまでは、我々もだるまを売りませんか? とだるま屋さんに提案することはなかったし、逆にだるま屋さんもデザイン小物の物販サイトであるCreemaで売ってみようという発想にはならなかった。でも、今、こういう機会をいただいて、いろいろやっているうちに、台湾、日本問わず、だるまは売れるということがわかってきました。しかもインテリアとして買われる方が多くて、中でも紅白だるまはグッドデザイン賞にノミネートされたほどデザイン的にもオシャレ。正月の飾り物や普段のインテリアとして使っている人が多いんです。だるまって、かわいいよね、オシャレだよねっていう見せ方ですね。

 あとは台湾から日本に旅行にいらっしゃる方向けに、スマートフォンのSIMカードをレンタルする際、上位のサービスをご購入された方にインセンティブとして小さいだるまをプレゼントしたり、日本でだるまの絵付け体験ができるなど、まだアイデアベースではありますが、そういう展開も今後は検討していきたいと思います。

戦略を考える段階で
現地のお客様と直接話す

 これから海外展開を目指す事業者の方、特に日本の工芸品を海外で展開しようとする方にアドバイスをするとしたら、まずは現地のお客様と直接会って話す。これに尽きるのかなと思います。準備万端整えてから現地に行っても、想定通りにいかないこともあります。それよりは、考える段階において現地でのイベントに出展したり、現地のサイトに商品を出したりして、お客様の反応を見ながら最終的な戦略を決めていったほうがいいと思います。直接反応をみると、ああそうなんだということがわかりますよ。