BrandLand JAPAN

  • Project Report
  • Feb 27th, 2018

鹿児島の歴史に育まれた
本格芋焼酎仕込みの梅酒


「小鹿梅酒」を台湾の若年層へ

事業者:小鹿酒造株式会社
プロジェクトマネージャー:福留千晴

鹿児島県産の梅実を100%使用。本格芋焼酎仕込みの梅酒ブランド「小鹿梅酒」を台湾で展開するプロジェクトです。“日本の歴史に裏付けされた本物のお酒”として需要の掘り起こしとブランディングを実施。PRや販路開拓も行いました。日本に比べてお酒を飲む文化が定着していない台湾の現状をどのように分析し、そこから「小鹿梅酒」をどう売り込んでいったのか? プロジェクトマネージャーの福留千晴氏が、運も味方につけた現地での日々を振り返りました。

ゼロからスタートした
台湾への挑戦

 鹿児島では、2017年7月に台北との直行便が週5便(往復)に増え、台湾人旅行客の姿が目立つようになりました。また、台湾への酒類の輸出規制が緩和され、このタイミングであれば、梅酒が現地で売れるのではないか? そんな想定をもとに始まったのが、本格芋焼酎仕込みの梅酒「小鹿梅酒」を台湾の若年層へ売り込むプロジェクトです。完全にゼロベースからのスタートで、しかも開始直後の9月から11月までは酒造りの真っ只中。この時期に事業者である小鹿酒造が鹿児島を離れることは難しく、私が単身で台湾へと向かいました。言葉や文化の壁がある中で、リサーチを行ったり、モノづくりのストーリーを現地の人たちに伝えていくのは、かなり困難な作業となりました。

 実は今回のプロジェクトを進めるにあたり、最初にシニアプロデューサーの方々から“ちょっと厳しすぎるんじゃないか”との声をいただいていました。その理由として、例えば、日本酒や焼酎への関税が40%であることや、台湾ではお酒を飲む文化が定着していなくて、まだまだこれからであること。規制緩和はされましたが、最近までお酒の輸出すら厳しい国だったんです。

気候風土と食文化は類似するが、
飲酒文化は大きく異なっていた……

 客観的に難しそうな状況ではありましたが、私は望みを抱いていました。というのも、鹿児島と台湾の食文化は、豚肉が中心で甘辛い味付けが多く、暑くて降水量が多いなど気候も似ています。なにより日本の大手酒造メーカーがまだあまり進出していないんです。逆に言えば、現地で我々のストーリーに共感してくれるパートナーさえ見つけられれば、可能性があるのではないかと考えたんです。

 そして、実際に台湾へ渡航して飲食店や販売店に足を運び、現地の飲酒事情などのリサーチを行うと、さまざまなことが明らかになりました。例えば、台湾の男性はビールを飲まれる方が多く、ようやく今、ウイスキーが飲まれはじめたところでした。頻度もまだ少なく30〜40代の方で週2〜3回飲む方はほとんどいなくて、だいたい月に1〜2回程度。ほとんど飲まないという方もいらっしゃいました。また、ビールを目上の方に注ぐ時に、日本では泡を適度に立たせるのが一般的ですが、台湾では泡を立てると液量が少なく見えてしまうため、泡を立てないように注ぐのが礼儀とされるなど、お酒にまつわる習慣やマナーにも日本との違いがありました。

 また、飲むシーンも日本とは違うことがわかってきました。台湾の人たちは料理の味をすごく大事にしているので、食事中にお酒は飲みたくない。だから食中酒の概念がないんです。飲んだとしても、食事を楽しむようなちゃんとしたレストランで飲むか飲まないかという程度。でも、最近では台湾にも居酒屋やクラフトビールスタンドなどができ始めているので、少しずつ変わっていくかもしれません。で、そこにいるお客さんを眺めていたら、1杯のお酒だけで1時間とか1時間半とかずっと喋っているんですよ。お酒がカフェのコーヒーみたいな感覚です。私が見ている限りでは、台湾の人は体質的にお酒が強い方が多いのに飲む習慣がないだけ。伸び代はすごくあると思います。

台湾女性にはこれまで
飲酒習慣が定着してこなかった

 梅酒といえば、日本では女性にも人気のあるお酒です。台湾女性の飲酒事情についても、さまざまな情報が得られました。女性は様々な背景から飲酒習慣が定着してこなかったので、飲んだとしても果実酒がメイン。だから梅酒は女性に飲まれている印象ですね。量をたくさん飲むわけではありませんが、梅酒の飲み方は基本的にロック。普段お酒を飲まないのであれば、水やソーダなどで割ったほうが飲みやすいと現地の人に伝えたところ、台湾の人にとって日本のお酒はありがたみがあるので薄めたくないらしく、それでロックを好んでいることがわかりました。あと台湾人女性の友人が話していたのですが、女性にとって家での晩酌はまだまだ定着していないようで、特に家でのひとり飲みは、病んでいるイメージがあるほど。台湾の人たちにとって、お酒はみんなで楽しく飲むものなんです。

 また、現地のレストランに協力してもらい、梅酒の新しい飲み方としてソーダ割を提案した時にも驚いたことがありました。グラスに氷を入れなかったんです。実は台湾には体を冷やさない文化があって、生野菜すら普段あまり食べないほど。だからソーダ割にも氷を入れないのは普通のこと。飲食店で出されるお冷も、台湾では温かいお茶でした。日本よりも暑い国だから、冷えている飲み物が好まれると思っていたんですが、逆でしたね。

試飲会でわかった、
意外な訴求ポイント

 試飲会も行いましたが、昼間から梅酒を飲んでいただけるほど好評でした。感想も予想外で、日本ではみなさん味わいについて語るんですが、台湾では香りに着目してくれて、梅の果実の香りだけでなく花の香りもしたとか、飲んでいるうちに芋の香りから梅の香りに変わったなどの感想をたくさん聞くことができました。実はこれまで小鹿梅酒は、蒸留酒由来の旨味や味わいを売りにしてきましたが、台湾の方が香りを評価してくださったので、逆に気づきをいただくことができました。この結果を踏まえて、台湾で販売されているほかの日本の梅酒と差別化する意味でも、今後は香りに着目した訴求を行っていきたいと思います。

ボトルデザインと
ネーミングの大切さ

 ボトルデザインも台湾での売り上げを左右する大きなポイントだと思います。当初は日本人の感覚では少しレトロ過ぎるラベルのデザインをリニューアルする予定でしたが、商品のロゴの色が現地で縁起の良いとされるゴールドであることや、梅の花のあしらいが日本らしいオーセンティック感があって好評だったので、現状のラベルのままで展開しつつ、アルコール度数の違う商品を新たなデザインで売り出そうと酒造さんと話しています。実は既存のラベルも並存させることには別の意味もあって、多い方だと訪日回数が年間3〜4回にもなるので、台湾で販売されている日本の商品を日本でチェックできてしまうんです。だから台湾向けにラベルをアレンジするとすぐにわかってしまう。台湾の人たちは、日本と同じものを買いたいので、台湾向けに手が加えられていると、日本から来たものではないと思われ、ネガティブな印象になってしまうこともあるんです。

 また、漢字の名前の商品を台湾で展開する際に気をつけたいのがネーミングです。「小鹿梅酒」というネーミングも、当初は台湾向けの覚えやすいネーミングがあったほうが良いのか、そのまま行くべきかどうか、酒造さんと悩んでいましたが、実際に台湾へ行ってみると「小鹿」は台湾では「シャオルー」と発音し、既存のアニメの影響もあり、台湾人女性は「かわいい!!」とすぐに反応。覚えやすく親しみやすいイメージということがわかりました。台湾人の方にとって、商品名が読めるかどうか、また親しみを抱きやすいかどうかは非常に重要であると感じました。

販路開拓の要は人とのつながり

 このようにさまざまな情報を現地で得られましたが、一番の成果は現地の販売代理店と契約が決まったことです。販売代理店のオーナーさんは、日本文化に造詣が深くて、飲食店を経営しながら酒類の輸入会社もされ、建築家でもある方で、小鹿酒造の商品、ものづくりは素晴らしいと最初から言ってくださったんです。フォロワー数の多いSNSで発信もされているので、この方と一緒ならブランドをつくっていく作業がうまくいくと確信しました。

 実はこのオーナーさんは、私が台湾でのPRやプロモーションを協働している会社、Fujin Tree Groupから紹介してもらった方。知り合うきっかけは運命的なものでした。私がひとりで台湾に行った時にふらっとお店に行ったら、たまたまオーナーさんがいらしたんです。お話ができるとは思ってなかったんですが、帰り際に思い切って話しかけて、梅酒を台湾に広めたいと伝えたら、すごく感動してくださって。私がプライベートで訪れたことも印象が良かったみたいで、次に小鹿酒造の方と一緒にお会いした時には、もう契約をしましょうという話になりました。あの時、話しかけてなかったら、今頃どうなっていたのかわかりません。現地でこの会社と交流のあるみなさんの中には、すごく素敵なカフェやバーをやっている方もいらっしゃるので、今後は周辺の方々も巻き込んでいきながら、一緒にブランドを作っていけたらと思います。

信頼できるパートナーと
巡り会えたことが最大の収穫

 当初は言葉に対して不安がありましたが、実際は思っていたよりもその壁が低かったことにも救われました。私は海外では英語がメインになってしまうのですが、台湾は日本語ができる方も多いですし、お互いの意思疎通が難しい場合は筆談(漢字)を通してコミュニケーションを取ることもできました。またこれは酒造さんとも常に話していたことですが「一方的にモノを売る」のではなく、「お互いの文化の架け橋になるようなプロジェクトにしよう」という思いもあり、言語の壁よりもその点が重要であったと感じています。

 今回のプロジェクトを総括すると、単純に販路が開拓できただけではなく、今後台湾で小鹿ブランドを一緒につくっていけるパートナーを見つけられたことが非常にありがたいなと思います。今後は初回に300本程度の小鹿梅酒を輸出して、そこからどれだけパイプを太くしていけるか。それが課題だと思います。変わりゆく台湾の酒場の姿や、台湾人のお酒との付き合い方を背景に、小鹿梅酒が現地でどこまで受け入れられることができるのか? 今後の展開が楽しみです。