BrandLand JAPAN

  • Relay Interview
  • Dec 3rd, 2018

作り手も、ものづくりの「先」を意識する時代

ミルデザイン代表取締役
青木昭夫さん

2018年10月、東京の表参道・青山を中心に行われたデザインとアートの祭典、「DESIGNART(デザイナート)TOKYO 2018」は来場者数述べ12万人という、前回(昨年)の約3倍もの集客数を叩き出した。そんなDESIGNART発起人たちの中心的人物であり、成功の立役者こそ、ミルデザインの青木昭夫氏。DESINART以外にも様々なデザイン・プロジェクトをプロデュースし、日本各地を飛び回り、地域性に基づいた熱量のあるプロモーションを展開している。そんな青木さんに、これからのものづくり、地域性を活かしたイベント作り、ムーブメントを起こす秘訣について聞いた。

学生時代に没頭した
デザインイベントとの出会い

学生時代はファッションの専門学校に通っていました。ファッションは大好きだったのですが、毎日友人たちと話すのはファッションネタばかり。もう少し広い意味でクリエイティブとかデザインとかを学びたい、そう思っていた矢先、とあるデザインイベントにボランティアで参加する機会をいただきました。グラフィック、建築、インテリアなど、今まで触れてこなかった業界に触れ、とても刺激になりました。中でもインテリアの世界に強く魅了されました。伝統的技法からカッティングエッジでモダンなものまで、デザインってこんなに自由なんだ!と。そしてそのまま、そのデザインイベントを主催していたインテリア会社に入社しました。

イベント作りのノウハウを活かし
企画会社ミルデザインを設立

インテリア会社でイベントや店舗の開発・運営を学び、その後独立しました。その時に東京で始まりつつあったデザインイベント「デザインタイド」の実行委員長に抜擢されました。すごく光栄なことでしたが、27歳でいきなり500人の前で演説することになったり、いろんな企業やアーティストを束ねたりと、とにかく何から何まで手探りで大変でした。それでもたくさんの方々の暖かいサポートのお陰で、実行委員長、ディレクターを5年間務めることができました。

年一回のイベントを5年間続けてきた過程で、多くのデザイナーさん、ショップさん、メーカーさんと繋がることができました。そしてそのつながりを、より恒常的に活用することで、業界をもっともっと活性化させられるのではないか。そう考えて立ち上げたのがミルデザインです。

企画のポイントはPRと売上の両立

ミルデザインとして初めての大きい仕事が伊勢丹さんと企画した鳩時計コレクションです。ファッションの伊勢丹の長い歴史の中で初めて鳩時計がウィンドウをジャックするというセンセーショナルな企画でした。鳩時計のデザインは深澤直人さんにお願いし、そのほかに森を大切にしたいという思いを持った様々なクリエーターとコラボしてアートカスタマイズした鳩時計を作り、それを展示販売しました。もちろん伊勢丹さんの販売力もあったのですが、PRとしてもかなり多くのメディアに取り上げられ、売り上げ的にも大成功でした。

このプロジェクトで初めて実感したのが、PRとビジネスを両立させる重要性でした。それまで僕が携わってきたデザインイベントは、どちらかというと売上よりも「これ、かっこいいでしょ!!」と優れたものを見せることに特化していました。年に一回のイベントであれば、それは良いかもしれませんが、日常的なプロジェクトとしては、しっかりと売上も伴わせなくてはならない。そのためにも企画だけでなく、伝え方(PR)や届け方(販売)も重要なのだと学びました。

世界一のものづくりの街に!
旭川デザインウィーク

地域と取り組んでいるプロジェクトの一つに、旭川デザインウィークがあります。旭川は日本の家具5大産地の一つと言われていて、もともと旭川家具工業協同組合が「旭川家具産地展」という、バイヤーさん向けのB to B展示会を60回開催していました。しかし、最近だと百貨店や小売店の家具売り場はどんどん縮小しています。このままB to Bに特化していても続かない。一般客も来れるようにしよう、ということで、B to C to Bを念頭にした、家具だけに捉われないデザインと暮らしの広場を目指し、2015年より旭川デザインウィークのクリエイティブディレクターとして関わらせていただくことになりました。

ミルデザインではプロジェクトに関わる全ての方がハッピーになる仕組み作りを心掛けています。そのために最も重要なのがチーム全体で共有するヴィジョン(目標)を作ること。旭川デザインウィークを機に「30年後、世界一のものづくりの街になる」という大きいヴィジョンを掲げることにしました。目標が大きい上に、メーカー同士もライバルですから。でも僕みたいな外部の人間が加わることで、どちらかの損得ではなく、フラットに切磋琢磨できるチームを作ることができました。インスタレーション担当、集客担当、協賛担当などなど、各人の頑張りが身を結び、今では過去の集客数の約6倍を集客するイベントに成長しました。

高揚感を上げる「見せ場」作りと
「出会いの場」の演出

イベント作りで意識しているのが「見せ場」を作ることです。特にデザインイベントなどにおいて、参加者がイベントに対して良い印象を持つためには、気持ちが高揚するポイントを3つ4つ体験させることが必要です。そうすることで感覚値として「全体的に良かったね」となりやすいんです。

旭川デザインウィークでは、まず旭川や北海道にゆかりがあり、世界的にも発信力のある著名建築家やデザイナーにインスタレーションをお願いしました。多くの方は、地元のために、ということで好意的に快諾いただけました。世界レベルのインスタレーションを招致することで、まずは業界内で「なんだか旭川が面白いらしいぞ」と話題になります。そうすると、人が人を呼び、「業界関係者はみんな行く」「行っておくべき」というイメージがつき、行くこと自体にステータスがあるイベントへ成長できます。

そして最も重要なのは「見せ場」を作ることで参加者の高揚感を上げることです。高揚感を上げた状態でものを見るのと、平然とした状態で見るのとでは、注目のモチベーションが格段に変わります。高揚感を上げることで、旭川の匠の技がよりよく見える状況を演出する。結果、業界内に「木工やるなら旭川が良さそうだ」という印象を与えていくことができ、街全体としてOEMの受注数が増えました。

同時にバイヤーだけでなく、デザイナーにとっても、職人との出会いがあったり、新しいインスピレーションの場になってもらいたいと思っています。今では国内だけでなく、アジア、ドイツ、オーストラリアのバイヤーもやってきて1000人規模のパーティーを開催できるところまできています。そんなパーティーの中でも、人と人を繋げてくれる仲人的な人を数十名揃えて置くようにしています。職人、メーカー、バイヤー、デザイナー、それぞれが出会う環境をちゃんと作ること、それが大切です。女性一人でふらっと参加したのに親友やビジネスパートナーができちゃった、みたいなことが実際に起きています。

ものづくりだけでなく
その後の伝え方を意識する

今はもので溢れた時代。しかも世の中に良質なものはいくらでもあります。その中で、どうやって選んでもらうか。そのためには伝え方が本当に重要です。これも旭川の事例なのですが、小さな工房に世界で活躍できるレベルのグラフィックデザイナーが入りました。そして彼がカタログを手がけるようになると、写真の撮り方、レイアウトデザイン、グラフィックがゴロッと変わり、同じ商品にも関わらず、瞬く間に見え方が変わり、小売店から扱いのオファーが増えるようになりました。

全体的な印象として、日本のメーカーさんはやはりグラフィックが苦手な場合が多い。写真、フォント、レイアウト、その辺りのクオリティを少し上げるだけでグンと変わります。そして意外と見落とされがちなのがコピーライティング。事務的な言葉ではなく、豊かな生活を想起させるような、屈託のない情緒的な言葉。その二つでだいぶ変わります。特に最近ではWEBやSNSの普及により、内容よりも先に写真やビジュアルが一人歩きする時代です。印象的なグラフィックとコピーは不可欠です。

メーカーにも求められる
コミュニケーション力

よくメーカーさんたちとお話しさせていただくのですが、ものづくりの先にあるコミュニケーションを意識しましょう、と。でもコミュニケーションって無形のものですよね。ものづくりをしているメーカーさんたちは有形以外のものにお金を払う習慣がないので、そこの意識改革が一番難しい。そういう時はちょっと視点を変えて自問自答してもらうようにしています。ブランドになりたいのか、メーカーになりたいのか、と。どちらかが良い悪いではなく、ブランドになるためには伝え方は最重要課題です。情報化社会の現代において、伝え方が伴って初めてものづくりが評価される、ということは珍しいことではありません。

あとはシンプルに飲みニケーションが上手い人は成功していますよね。結局それかよ、と怒られるかもしれませんが、でも実際にそうです。ただ、ここでいう飲むということも、単純に発注者と受注者の関係でつるむ、ということではなく、人と人として繋がるというか、喧々諤々言い合える熱量のある関係性を作るということ。ビジネスを越えた部分で熱意を共有できるネットワークを、いかに社外に作れるかということも強力な競争力になってくると思います。

学生時代、哲学の勉強もしていたのですが、その時知り合った女性から、「100人中100人に愛される人と100人中50人には好かれ、50人に嫌われる人とどっちがいい?」と聞かれたことがあります。僕は万人に愛された方が良いに決まってると思っていたんですが、その方は後者の方が「信用できる」と。100人中100人を喜ばせるのは一見良さそうですが、ある意味個性がない。これはメーカーにも言えること。万人に受け入れられたいと思うものは、どこか角が丸くなるというか、どこにでもありがちなものになってしまいます。それよりも、これを貫きたいという信念や独創性はあった方が良いと思います。