BrandLand JAPAN

  • Relay Interview
  • Dec 2nd, 2018

日本酒とフレンチの新たな可能性を求めて

JAPAN EXQUISE株式会社
ルイ・ロブション・安部さん

日本酒を再定義することで
フランスでの定着を目指す

フランス人の父と日本人の母のもとに生まれ、幼少期からフランスと日本を行き来する生活を送ってきたルイ・ロブション・安部氏。世界でもっともミシュランの星を持っている料理人の父、故ジョエル・ロブション氏のもと、ありとあらゆる極上の料理を食してきました。両国の伝統や文化に精通し、今では確かな味覚をもつ稀有なワイン伝承者と言われています。株式会社ルイRの代表として、日本未入荷ワインやオールド・ヴィンテージワインを輸入してきましたが、今度は逆に日本の文化をフランスに輸出するJAPAN EXQUISE株式会社を設立。右腕の小川喜紀氏とともに、日本人が見過ごしてきた日本の魅力を追求し、海外へ発信しています。日本酒から始まった新たな取り組みは、日本とフランスの文化を繋ぐ大きな架け橋となりそうです。

酒蔵を回るうちに発見したのは
フレンチと日本酒のマリアージュ

6年ほど前にルイRという会社を立ち上げて、フランスワインを輸入する事業を行ってきました。その仕事を続けていくうちに、日本のワイナリーや酒蔵に興味を持ち出して、日本中を回るようになったんです。当時、ワインの知識はありましたが、日本酒の知識があまりなくて。日本酒の深さと美味しさに惹かれて、1年くらいかけて蔵を回りながら勉強していきました。
そして蔵を巡って、さまざまな日本酒を飲んでいくうちに、フランス料理との相性はどうなんだろうという単純な疑問がわいてきて、いろいろ試すようになったんです。フレンチのなかにも、ワインに合わせづらい料理があるんですよ。卵を使った料理や酸味がある料理、根菜……でも、ワインが合わせづらい料理に日本酒と合わせてみると、ワイン以上に合うことがあって。ここに大きな可能性を感じたんです。

今の課題は日本酒の認知度を
自然に伝播させること

日本におけるフランスワインは1000億円市場なのに、フランスでの日本酒のシェアは2億円強ほどしかありません。中国の蒸留酒と勘違いしている人が大半で、そもそも認知度が低いんです。でも、飲んだ人の反応はとてもいいんですよ。今、その規模に留まっているのは、日本食や日本人のコミュニティだけに留まっているからだと思います。現地のフランス人や、フランス料理のお店に行き届いていないんです。今は日本人のなかでシェアを奪い合っている状況なので、そこを変えないと市場は大きくなりません。だからといって、闇雲に広げるのではなく、まずはミシュランで2つ星、3つ星を取っているようなハイエンドなお店で扱ってもらうことで、一時的なものではなく自然な形で広がり、そして根づいていくと思います。

また、フランス料理の場合、ソムリエの存在がとても大きいんです。料理だけでもお酒だけでもなく、料理とお酒の組み合わせで、1+1が2ではなく3にも4にもなる。ソムリエは作り手とお客様を繋ぐ重要な存在です。単に飲んでもらうのではなく、その背景のストーリーをソムリエに説明してもらって特定の料理に合わせて飲むと、日本酒もまた違った表情に見えるはずです。ものによってはワイン以上に合う料理もありますし、そして何より、そこには生産者の大きな努力があります。味を広めるだけでなく、その背景も同時に伝えることで、フランスでの認知度向上に繋がっていくと思います。

フランス料理に合う日本酒を求めて
オリジナルで1から10まで開発

日本酒をフランスで広げるにあたって、オリジナル商品を作ることにしました。味も外装も、まずは現地の文化に合わせる必要があると思ったからです。ソムリエからの意見もあり、バランスのいい日本酒よりも、強い特徴のあるエッジがきいた日本酒の方がフレンチと合わせやすいとわかったので、味はその土地や蔵の特徴をしっかりと出すことを意識しました。日本酒の場合、良し悪しは別として、例えば北海道の蔵元が兵庫のお米でお酒を造ることもよくあるのですが、フランスだとなかなか理解してもらえません。テロワールという言葉がありますが、土壌や天候から、その土地でしかつくれないということに重きが置かれているので、その土地のお米を使っていないとすんなり受け入れてもらえないんです。そこで今回は、お米、水、酵母、すべてその町や村の範囲内で作られた原料ということにもこだわりました。田植えから上槽まで、酒蔵さんのご協力のもとすべてのステージを一緒に行っています。

こだわりの分だけ手間暇をかけて
希少性の高い逸品を追求する

北から南まで、いろいろな酒蔵を回りましたが、味や土地に特徴があって、海外に対する意識が高いところにご協力いただきました。正直、今回の酒造りは結構無茶なこともお願いしているので、今までやったことがないことを面白いと感じてくれるということも大事だったんです。例えば、通常だと30日くらいのところを低温で45日くらいかけて発酵させ、ゆっくり優しい旨味を抽出したり、機械ではなく袋吊りで一滴一滴時間をかけて絞っていったり。その酒蔵だからできる味を大事にしながら、昔からある作り方を採用してもらいました。

外装についても、日本酒は漢字のラベルが印象的なのですが、現地のソムリエに言われるのは、ラベルが読めない、中身が何なのかわからないということ。そこで、フランスになじみのあるデザインを大事にしながら、どこかに日本らしさも残す工夫を凝らしています。ボトルはフランス製の手作りのものを、コルクにはイタリアで人工血管に使われる特別な素材を使用しました。それを日本まで運ぶのも手間がかかりましたし、そこから手作業で日本酒を注ぎ、コルクを閉め、蝋封をして……すべてにおいてこだわりを凝縮させています。3つ星レストランに置いてもらうにあたって、ソムリエがボトルを持って店内を歩いたときに映えるということも重要でした。

高評価に甘んじることなく
最初に掲げた目標に向かって

すでにパリでは、3つ星のパヴィヨン・ルドワイヤンとジョエル・ロブションでお披露目をしましたが、反応はとても手ごたえのあるものでした。フランス料理との相性がいいということを伝えたかったので、ディナー会とランチ会を開いて、フレンチのコース料理と日本酒を楽しんでもらいました。既にフランスで扱われている日本酒よりも個性が強かったと思いますが、今まで飲んだ日本酒のなかで一番美味しいという声もいただいて、とても嬉しかったです。味わいについてもそうですが、やはり背景にストーリーがあって説明しやすく、外観がわかりやすいという思いどおりの反応も多くいただきました。作れる本数が限られる商品なので、いい意味で希少性も持ってもらえたと思います。

ただ、単純にお店で扱ってもらうだけでは、なかなか広がっていきません。ワインリストの一角に日本酒が載っているだけでは、お客さんが頼みづらいので、ペアリングで使ってもらうなどの工夫が必要です。メニューに載ればそれでいいわけでなく、もう一歩踏み込んだ提案ができればと思っています。

ふたつの国の文化を繋いで
地域の発展と社会貢献を目指す

今後は、日本酒だけでなく、日本の魅力をもっと世界に発信していく予定です。日本には、日本人でも知らないいいものがたくさん眠っています。最近、50年熟成されたみりんに偶然出会ったのですが、これが想像を絶する美味しさで……こういう食材が日本中にたくさん眠っているんです。先日、鹿児島のフェアをパリで行ったのですが、和牛やブリはフランスでも注目度が高い商品ですし、鹿児島に限らずお醤油や黒酢、味噌といった調味料や、胡麻や山椒といった調味料にも可能性を感じました。そのなかで実感したのは、やはりフランス人が大切にするのは、その土地だから出せる味だということ。以前、日本の知人からみかんを輸出してほしいと頼まれたのですが、いくら美味しくてもフランスに似たものがあったら意味がありません。その国の文化に寄り添って提供することが必要になるのです。

また、輸出入には多くの手間がかかります。とくにお酒や食材は規制が厳しいので、日本の海外進出を目指している地域の方々と協力をしながら、パッケージとしてフランスに提供していければと思っています。逆輸入もしかりで、日本国内でも知ってもらって、国内の消費が伸びるのも嬉しいことです。日本酒の蔵はどんどん減っているのが実情で、過疎化も進んでいます。フランスでのチャネルを活かして、少しでも社会貢献や産業発展に繋がれば――。地域の方々の発展とともに、会社としても成長していくことが、私たちの大きな願いです。