BrandLand JAPAN

  • Relay Interview
  • Nov 7nd, 2018

アートの力があれば、
日本はもっと世界と戦える

羽田未来総合研究所
大西洋社長

数十年に渡って日本のモノづくりを支援し、活性化に寄与してきた大西洋氏。社長まで勤めた三越伊勢丹HD在籍時代には伊勢丹メンズ館など多くの成功事例の中で、地方に埋もれていた多くの名品を発掘。2018年には日本空港ビルデング副社長、および同年に設立した羽田未来総合研究所の社長に就任し、世界へと開かれた新たな玄関口で日本の魅力を伝えている。日本のモノづくりの魅力とは。海外展開に必要な姿勢とは。話を伺った。

地方創生の名の下
地域の魅力を国内外に発信したい

今、私は3つのことに挑戦していきたいと考えています。
1つめは、地方創生です。前の会社でも「this is japan.」や「JAPAN SENSES」を旗印に、地方にある匠の技や文化を世に広める活動を行ってきましたが、日本の将来を考えたときに地方創生がとても重要だと考えています。収益や承継者不足などの問題から、2025年には地方の中小企業の3分の1がなくなるといわれています。
地方から人がいなくなる一方、海外からの来日客は増加し続け、今年2018年は年3000万人を超えると見込まれています。2020年には4000万人、その先は6000万人と増えるでしょう。発掘といってはおこがましいですが、各地方にあるすばらしいモノや技術を日本、さらには海外のみなさまにお伝えし、理解していただく活動を続けたいと考えています。

アートはもっと一大産業に
成長できる

2つめは、少し分野は異なりますが、アートの産業化です。日本はこの分野があまりにも弱く、先進国であるフランスと市場規模を比べると、桁が2つ違うくらいです。日本にはアーティストもプロデューサーも優秀な人達がたくさんおりますから、そうした方々が正当な評価を得て、収益も上げられ、日本経済の一端を担う規模に成長していってほしいと考えています。
アートへの理解というのは、ただ有名な美術作品を見たり、知識を備えるだけではありません。地方の片田舎へ行き、自然の景色を前にホッと心安らぐ気持ちになる。そこには日本人らしい美意識があり、そうした感性をもっと育んでいけばいいのです。より大きな市場として確立するには、個人だけでなく、企業人もアートを理解する感性を備える必要があるでしょう。アートは、日本が世界と戦える分野だと考えています。

人材こそが、すべての礎

最後の3つめは、人材育成です。あらゆる物事は、最後は人ですから。
私はもう60を超えていますが、これから10年後、20年後の日本を背負っていくのは、今の若い世代の人たちです。経営者として得てきたさまざまな経験をもとに、グローバルな世界へ挑戦しようとする人たちの成長を助け、日本をよりよくしていく活動をより積極的に行っていきたいと考えています。この「Brand Land Japan」のシニアプロデューサーを勤めているのもその一環ですし、今年立ち上げた羽田未来総合研究所でも取り組んでいきます。

日本人も日本の魅力に
気づけていない

百貨店でのバイヤー時代、地方には本当によく行きましたね。百貨店は「衣・食・住・遊」すべてを扱っていますから、とにかくバイヤーが自らの足で全国を周り、目を利かせて魅力的なモノを見つけてきました。その多くは、世間的な認知はなくともオリジナリティがあるモノです。
2008年、経済産業省がクール・ジャパン室を作りました。日本製品の海外展開を促進することが目的でしたが、日本人も日本の魅力に十分気づけていないのではないか?と感じていました。そうした気持ちも、全国を行脚するモチベーションにつながりました。

世界に誇れるラグジュアリーブランドが
足りていない

数十年に渡って日本のモノづくりの現場に触れてきましたが、不足していると感じているのが、ラグジュアリーブランドの存在です。
20年ほど前、好景気に沸いた日本は世界各国に旅行して、憧れの高級ファッションブランドの洋服やバッグを手に入れてきました。今では、中国や韓国からの観光客を日本国内に招き入れる立場となりましたが、日本には世界に誇れるラグジュアリーブランドがほとんどありません。
しかし、海外のラグジュアリーブランドのテキスタイルは日本で製造したものだったりする。モノはあるわけです。実は一桁少ない額で、同様のモノを日本国内で買えるのです。
工業製品はブランド化が成功しているかもしれませんが、ファッションなどそれ以外の分野では、日本はブランディングが上手ではないようです。日本人がしっかりと価値を見出し、世界的なブランドを打ち出していければ、地域や製造産業の活性化につながると思います。

世界に挑むには絶対の強みを
見つけること

海外進出を望む、望まないにかかわらず、ビジネスとして成功するにはやはりコア・コンピタンス、ご自分の会社の一番の強みを明確にして、いかにコンペティターと違っているか、優位性があるのかをキチッと表現していくことが大切です。それが自信へと繋がります。当然ですが、他でもできるオリジナリティのない製品に、魅力は感じないものです。
たとえば私が今日差してきたチーフは、石川県の天池合繊で作られている、世界で最も軽くて最も細い織物です。天池合繊は繊維メーカーですが、幅広い需要に応える中でプラズマテレビの回路用として極細の繊維を開発したそうです。それを織物にしてみたところ、やがて海外のラグジュアリーブランドも買い付けにくるほど大ヒットを果たしました。誰も真似できない強みがそこにあったわけです。

発信しつづければ
やがて良縁が結ばれる

日本は長らくデフレが続き、意欲的な製品を開発してもビジネスに乗らなかったり、安く買い叩かれたりすることが少なくありませんでした。しかし、そこで海外にも目を向けてみると、まったく違った評価が返ってくることがあります。わかってくる人には、わかるのです。いきなりビジネスにはならなくても、よいモノは口コミやSNSで広まっていく時代です。いろいろな人とのつながりを大切にしていくうちに、良縁に巡り合うこともあるでしょう。あきらめずに、発信していくことが大事です。

行政府のサポートも
積極的に活用する

実際に海外への進出を検討したとき、企業単独では資金力や手続きなどさまざまな困難が待ち構えているのも事実です。そのため、経済産業省や外務省などの行政府の支援を最大限に活用すべきですし、行政府側も、もっと実効性のある支援を次々に打ち出していくべきだと考えています。各種事業には有能なプロデューサーが起用されていますが、やや偏りも感じますから、もっと多くの人材を挑戦的に活用したほうがいいのではないでしょうか。「メイド・イン・ジャパン」のブランディングを強化するのも大切ですが、この多様性の時代、どの製品も同質化して見られてしまっては魅力も半減してしまいかねません。
資金面についても、コンソーシアムやプロジェクト化し、より支援しやすい環境を築き上げるのがいいでしょう。

目先の利益に惑わされず
将来を見据えた経営を

日本にいらっしゃる、インバウンド客相手にビジネスする考えもあるでしょう。自社製品を海外に方に知っていただける、チャンスだと思います。
ただお客様という意味では、日本の方も海外の方も違いはありません。海外の方にヒットして直近の売上がものすごく伸びることもあるでしょう。しかし、目先の売上ばかりにとらわれてはいけません。3年後、5年後もそうした状態が続いているのか。そのとき、どのような経営を行っているのか。常に一歩先を見据えて行動すべきです。今でこそ来日観光客数が3000万人くらいになりましたが、1000万人前後だった5年ほど前、空港ビルからお話をいただいて、空港型市中免税店の出店を決めました。現在、やっと計画に近い形で推移しはじめたところです。

日本の魅力に触れられる
空の玄関口に

羽田空港周辺にはいくつかの開発があり、2020~2022年には日本のアートや文化、テクノロジーに出会える場ができるといいと思っています。併せて地方創生という観点から、地方の逸品をセレクトしたスペースや、若いアーティストたちが定期的にフェアを開催できるブースも必要だと考えています。
今でも年間3000万人超が来日し、その4割近くが羽田を通られます。海外からいらしたみなさまが、日本の魅力やクリエイティビティに触れていただける。そのような場にしたいのです。
楽しみにしていてください。