BrandLand JAPAN

  • Project Report
  • June 7th, 2018

進化を続けるメゾン・エ・オブジェから見た
最新トレンドとは?

世界最高峰のデザイン、インテリアの展示会として知られるのが「メゾン・エ・オブジェ」です。毎年1月と9月にパリで開催され、世界中の業界関係者が来場。日本からも毎回多くの出展者や来場者が会場を訪れています。今回は、このメゾン・エ・オブジェから発信される最新のトレンド情報や企画について、内閣府 政策参与(クールジャパン戦略担当)であり、BrandLand JAPANの浜野京シニアプロデューサーが、メゾン・エ・オブジェを主催するSAFIのフィリップ・ブロカールCEOにお話を伺いました。

2018年9月のテーマは、「ラ・ベルチュ」

浜野 メゾン・エ・オブジェのテーマは最新のトレンドを先取りしており、いつも関心を持っていますが、2018年のテーマについて教えて下さい。

ブロカール メゾン・エ・オブジェでは、毎年新たな潮流を来場者のみなさまにご提案しているんですが、9月に行われる今回のテーマは「ラ・ベルチュ」、日本語で徳という意味です。実は世界ではすでに新しい消費動向が始まっています。それはどういうことかと言えば、消費者はこれから買おうと思っているものへの興味や関心が、以前よりも深くなってきており、非常に注意深く買うモノの選択をするようになってきているのです。その商品がどこで生産されたものなのか、どういう背景で生産されたのか、そういったまさに「ラ・ベルチュ」、徳ということが、これからの消費にとって重要な点になってくると思います。今後、メゾン・エ・オブジェにいらっしゃる方たちも、この新しい消費の潮流を理解していただけると嬉しいです。

浜野 素晴らしい提案ですね。近年の世界的な消費の潮流、サステナブルにも通じ、包含するようなテーマ、「ラ・ベルチュ」は非常に興味深いです。

ブロカール 「ラ・ベルチュ」は、一時的なトレンドではなくて、社会的な大きな流れだと思います。出展いただく日本の企業の方たちは、まさにこの部分を多く持っていらっしゃいます。ものづくりに一種の哲学があり、サステナビリティを非常に考えた素材を使われておられます。また、日本の企業の方とその商品は、ご自分たちのストーリーを持っておられます。ここはすごく大事なことで、このストーリーの背景には、それを支える職人さんたちがいらっしゃるんです。そして、クリエイターの方たちと一緒に素晴らしいものづくりをしておられます。そういう意味では、出展いただく日本の企業の方たちは、今回の「ラ・ベルチュ」、徳というテーマをすでにお持ちだと思います。

浜野 ありがとうございます。日本の出展者にエールをいただきまして。ところで、9月のメゾン・エ・オブジェでは、新しい商流やeコマースなど、いろいろな企画を取り入れて、ドラスティックに変えられたと伺っていますが、具体的にはどのように変えられたのでしょうか?

会場をメゾンとオブジェに分けて構成

ブロカール メゾン・エ・オブジェはここ2年、課題を抱えていました。出展者の方たちが展示する商品を、どういう風にアイデンティティを持たせて皆さまに見ていただくか? 言ってみれば、どうすれば来場される方たちがエリアのアイデンティティをしっかりわかって、買い付けがしやすくなるのか? つまり、どのようにしたら一番効果的な展示会になれるのかということを、ここ2年、自分たちの課題にしていたのです。そして、コンサルタントの方たちやアドバイザーの方たちにいろいろとご相談し、自分たちでもいろいろと勉強をしたり、研究をした結果、解決策を見出しました。この展示会は、メゾン・エ・オブジェ、つまり“メゾンとオブジェ”と呼ばれている展示会でしたが、両者が交差しすぎてしまった。そこで二つのパーツに分けることにしました。1つ目のパーツがオブジェです。これはリテーラー、小売業界のバイヤーさん向けの会場になり、ホームリネン、ホームフレグランスというようにカテゴリー別に商品をご覧いただくようになります。そして、2つ目がメゾンです。こちらは主にプレスクリプターと呼ばれる空間デザイナーの方たちに向けた会場で、カテゴリーではなく、スタイル別に構成しています。

浜野 なるほど、バイヤーはじめ来場者にとってわかりやすいですね。カテゴリー別に買いたいバイヤーさんがたくさんおられますし、また、一方で、昨今ではライフスタイルショップだったり、テーマによってお店の売り場を表現されるリテールの方も増えていますからね。とても参考になると思います。

デジタルプラットフォームMOMが始動。

ブロカール 2つ目のチャレンジはeコマースのMOMです。これはメゾン・エ・オブジェ・モアの略で、メゾン・エ・オブジェのデジタルプラットフォームになります。非常に限られた5日間の会期以外でもメゾン・エ・オブジェのプラットフォームを使っていただくためにMOMを立ち上げました。

浜野 デジタルプラットフォームMOMでビジネスマッチングをサポートするということですね。会期中に全部ビジネスが成立すればいいのですが、そういうわけにもいかず、出展者が会期後、パリにコンタクトポイント、つまりお店やショウルームに商品を並べて、ビジネスをフォローしていきたいところですが、現実には、なかなか叶わない人もいますから。

ブロカール 会期中にいらした方ですら全部見きれないと思いますので、皆さんがそれぞれの国にお帰りになったあとに、もう一度このデジタルプラットフォームで見きれなかった商品を見ていただければと思います。

ヴァーチャルな動画で展示会場を再現

浜野 メゾン・エ・オブジェの会場は、素晴らしいインスタレーションをされる空間作りのプロがおられます。MOMの画面も、どなたかがディレクションをしてモノを並べるのか、あるいは出展者が出した電子媒体でお見せすることになるのか? そのあたりは、どうされるのでしょうか。上手に見せることができない出展者には、メゾン・エ・オブジェの方が素敵な雰囲気を作り上げるなど、なにかお手伝いしていただけるような可能性はあるのでしょうか?

ブロカール 現在は出展者の方たちがご自分で写真をMOMに掲載されています。例えば、カタログ用に撮影された非常に質の高い写真であったり、展示会のブースを写真に撮られて、写っている商品にナンバリングをして、ヴァーチャルの展示会のブースにいらっしゃったような演出で、ご自分のサイトに載せる方もいらっしゃいます。さらに、9月のメゾン・エ・オブジェから新たな試みを始めます。ただ写真を撮って、ウェブサイト上で展示会をお見せすることではなく、それを動画の形で展開する、ヴァーチャルなメゾン・エ・オブジェのブースに入っていき、そこで買い付けをするかのような動画になります。今、その用意をしている最中なんですよ。

ホテルやファッション、eコマース関係の来場者が増加

浜野 そのようなチャレンジをなさっておられる中、最近の来場者やバイヤー、出展者にはどのような変化がありますか? なにか特徴的なことはありますか?

ブロカール そうですね、3つほど上げられると思います。1つはホテル関係の来場者が増えました。非常に多くいらっしゃるようになりました。以前は、プレスクリプターを通して注文や発注をされていましたが、最近ではホテル関係の方がいらして、ダイレクトに発注されるケースが増えています。これは大きな変化ですね。2つ目は、リテイラーのバイヤーにファッション関係の方が増えていること。運営されているコンセプトストアにインテリア関連の商品も揃えることで、品揃えのバリエーションを増やされているということでしょうか。3つめはeコマースの方の来場が増えていることです。インテリアを扱うご自分たちのプラットフォームを新しく作って、買い付けた商品を売っています。来場の方たちに関しては、これらの傾向が見られますね。

浜野 国や地域に関してはどうですか?

ブロカール 最近はやはり中国からの来場者が増えています。あとはアメリカ、ロシアですね。この両国に関しては、2015年にパリでテロ事件があった後に大きく減りましたが、今はもう戻っておりまして、その数は事件の前よりも増えている状況です。

ほかのイベントとも連動したパリ全体の魅力とは?

浜野 なるほど。ところで、日本からの出展者、来場者は、メゾン・エ・オブジェに参加するだけではなく、会場でなにかのヒントを探したり、インスパイアされるものを求めるなど、いろいろなことを勉強したいと思っています。同じ時期にパリで行われているデザインウィークや、街中のショップのインスタレーションなども含めて、日本の人たちからすれば、パリ全体が学びの場になっていると思います。これは街の魅力と相まっているところが非常に大きいと思うのですが、そこは産業政策的に連携しているところが大きいように思いますか。

ブロカール おっしゃっていただいたように、9月のパリは、メゾン・エ・オブジェ、パリ・デザインウィーク、あとは古美術の方たちによるアンティーク・ビエンナーレが行われます。それからもうひとつADというインテリア雑誌がADアンテリウールというイベントを行っていて、これも非常におもしろい。街として、これら4つのイベントがお互いに補完し合い、相乗効果をもたらしながら、ライフスタイル全体を盛り上げていこうという計画がありますね。

浜野 素晴らしいですし、参考にしたいところです。

ブロカール 今年、パリでは日本のイベントが多いんです。

浜野 そうですね、日仏交流160周年ですから。

ブロカール 日本のチームラボも大きなイベントを開催しています。

浜野 チームラボのようなデジタルアートも、既にメゾン・エ・オブジェで取り上げていただいていますね。その時のメゾン・エ・オブジェの会場では、お点前を差し上げるような、日本の伝統文化を新しい形で体験してもらう企画でした。メゾン・エ・オブジェの目利きと提案力、包括力を感じます。

ブロカール 私たちのチームでは、メゾン・エ・オブジェはいったいどういうメッセージを持っているんだろうと常に話し合っているのですが、いつもビジネスとクリエイティビティ、このふたつが大切だよねということに落ち着きます。ビジネスとクリエイティビティを常にキャッチボールしあうことがメゾン・エ・オブジェなのです。クリエイティビティだけでも十分ではありませんし、ビジネスだけでも十分ではなくて、やっぱりビジネスとクリエイティビティの両方が揃ってのメゾン・オ・オブジェだと思います。

浜野 素晴らしい。まさにメゾン・エ・オブジェの真骨頂ですね。これからも私たちを常に刺激し続け、サポート、進化するメゾン・エ・オブジェに、大いに期待しています。