BrandLand JAPAN

  • Interview
  • May 31th, 2018

世界最大のBtoB消費財の見本市
「アンビエンテ」が

ビジネスに直結する理由とは?

その1 メッセフランクフルト ジャパン梶原代表に聞く

毎年2月にドイツのフランクフルトで開催されている、世界最大のBtoB消費財見本市が「アンビエンテ」です。テーブルウェアをはじめ、キッチン用品、インテリアアクセサリー、ギフト雑貨など、さまざまな消費財のメーカー、商社、デザイナーなどが集まり、世界中のバイヤーと商談を行う場で、日本からも毎回多くの企業が出展しています。海外市場を開拓するにあたり、「アンビエンテ」をどのように戦略的に取り込んでいけばよいのか、メッセフランクフルト ジャパン梶原靖志代表に、内閣府 政策参与(クールジャパン戦略担当)であるBrandLand JAPAN浜野京シニアプロデューサーが、お話を伺いました。

多様性が魅力のアンビエンテ

浜野 アンビエンテの特徴のひとつは、欧州だけでなく新興国も含め、出展者、バイヤー共に世界中から集まることですが、最近の傾向を教えていただけますか?

梶原 アンビエンテは多様性が魅力と言えます。出展者は本当に多岐に渡っていまして、一番多いのは開催地でもあるドイツです。全体でみるとドイツとそれ以外の国と地域では、半々くらいの割合になります。ドイツ以外ではイタリアやフランスも多いですし、ほかにも中国やインド、香港は出展者の数が増えています。トータルでは4000社から4500社くらいの出展者にご参加いただいていますね。かっこいいメゾン・エ・オブジェに対して、何でもあるアンビエンテという風な位置付けなのかなと思います。メゾン・エ・オブジェにはないナショナルパビリオンのような国別の展示もアンビエンテにはたくさんあります。

浜野 アンビエンテではパートナーカントリーを毎年設定されていますね。

梶原 2012年のデンマークから始まり、2013年のフランス、続く3年目の2014年に日本が選ばれました。

浜野 ヨーロッパの国がずっと続くのかと思っていたら、3回目に日本が選ばれました。日本に対するシンパシーを感じて嬉しかったです。毎年日本からもかなりの数の出展者が、いろいろなホールに分かれて出展されますよね。

梶原 日本からの出展者は、だいたい80社から100社の割合で推移しています。ジャンルはダイニング系が多いんですが、それ以外の方もいらっしゃいますし、価格帯もさまざまです。

浜野 メゾン・エ・オブジェはどちらかというと一歩先のデザイン性をみせるエッジィな商材も多いんですが、アンビエンテは、そういうコーナーもありつつ、多様な構成だと思います。ホールによってはコントラクトの業務用、つまり、ホテルとかレストランとかチェーン店とか大きなビジネスにつながるようなバイヤー向けのホールもあれば、セレクト、小売バイヤー向けのホールもあり、多様な客に多様な展示者が集まっている印象です。

梶原 そうですね。お客様に関しては、来場者が14万人前後で、そのうち半数はドイツ以外になります。次に多いのがイタリア。その次が中国で、最近すごく増えています。ほかにはアメリカ、ロシア、ドバイなどからもよく来ていただいていますね。

浜野 実際、日本の出展者からは、アンビエンテでは欧米やアジアだけでなく、ロシアや中東など他ではなかなかリーチできない新興市場のバイヤーからまとまった金額の注文をもらったという話も聞きます。日本の出展者はその辺も戦略的に見極めることが大切ですね?

梶原 ブースに出す製品は、定番ものからトレンドものまで毎回多岐にわたって出されている方が多いんですが、ただ展示するだけでなく、ターゲットとする国によってプレゼンテーションまで変えるケースが増えています。うちのブランドはこうですって並べるよりも、ここの一角は、例えばロシア向けですという形で、ロシアの方が好みそうなデザインを提案する出展者が増えているように感じます。

国内のライフスタイル展から、海外展につなぐ

浜野 ところで、メッセフランクフルトは、日本に支社があって、東京で春のインテリア ライフスタイル展、秋には家具を中心にIFFT/インテリア ライフスタイル リビングを開催されているので、日本の企業にとっては、主催者とのつながりが強くなって、国内展示の先にアンビエンテがつながっていくという流れがつくりやすく、ユーザーフレンドリーなビジネス環境がありがたいという声が聞かれますが。

梶原 それが私たちのひとつの大きな特徴だと思っております。例えば、ドイツにはその都市ごとにメッセの会社があるんですが、日本で展示会を単独で主催しているのは弊社だけで、支社は上海にもありますし、インドでも立ち上がりました。元となる展示会はフランクフルトでずっと開かれていますので、国内だけではなくて、海外のいろいろな地域においてもお客様をつないでサポートさせていただける環境があり、お客様からの評価につながっているのだと思います。

浜野 日本国内で開催されているインテリア ライフスタイル展では、海外から有力なバイヤーを招聘している点も出展者の海外展開につながっていますね。

梶原 今年6月には、MoMA(ニューヨーク近代美術館)Design Storeのバイヤーの方を招聘しております。昨日も今日も会場を歩いていらっしゃって、通訳の方をつけて買い付けをたくさんされていました。

浜野 日本の企業にとっては、まだ本格的に輸出に取り組んでいなくても、チャンスがあればMoMAのような美術館のショップに商品を置いてもらいたい企業がたくさんおられます。日本の商材は小振りでデザイン性に優れたものも多いから、ミュージアムショップに向いていると思います。

梶原 実際、MoMAのショップには日本の商品が多数置かれています。そういう海外の著名なショップの方が日本のインテリア ライフスタイル展にも来場して買い付けてくださる。つまり出展者にとっては、わざわざ営業に行かなくても少なからずチャンスがあるということなんです。我々としてももっと積極的にお呼びしたいですね。そのためのひとつの方法として、フランクフルトのアンビエンテで、日本のモノづくりを世界に発信する場所であるジャパンスタイルコーナーに来てくださった方に、ノベルティを差し上げてお名刺をいただき、当選すれば日本にご招待します、みたいなことも積極的に行って、我々のバイヤーのデータベースをキチンと構築していきたいと思います。

出展者のビジネスマッチングをデジタルで支援

浜野 近年の傾向として、eコマースの台頭が顕著ですが、御社の展示会ではどのように取り込んでおられますか?

梶原 実は展示会のデジタル化は、展示会業界の今一番ホットなトピックですが、日本はけっこう遅れているところがあると感じています。展示会ってネットに取って代わられるんじゃないかと思われる方もおられるかもしれませんが、BtoCのように自分で買ったものは自己責任で済むものは比較的すぐに変わると思いますが、BtoBの場合は、その先にユーザーのお客様がいらっしゃいますし、やっぱり実際に会って商材を見てみる、手に取ってみる、話してみるというところから信頼関係を構築して取引につながる部分があります。それを踏まえると、デジタルのいいところとアナログのいいところが補完しあったBtoBの新しい形、進化した形ができてくると思います。例えば、海外の人が日本の展示会に来ると、ビジネスマッチングもキチンとできず、ビジネスがつながりにくいことがあるんですけど、そういう部分を積極的にデジタルで支援していくような取り組みをすべきだと思っていまして、検討を進めているところです。例えば、今、私たちの来場者となる小売店さんなどでは、お客様が店舗で商品を見るだけ見て、実際に買うのはネットという、店舗のショールーム化が進んでいます。そこで、小売店舗を救済できるような仕組みをアンビエンテとして提案しようと、今年からそういう企画展を3か年計画で始めています。

さまざまな企画がビジネスを効率化させる

浜野 おもしろそうですね、期待しています。ところで、日本の出展者に伺うと、アンビエンテはコントラクトの業務市場に強いというお話を伺いますが?

梶原 メゾン・エ・オブジェやミラノサローネと比べると、アンビエンテは地味な展示会なんですが、行う企画がすべてビジネス直結なんです。例えば、「Trends」展示も、出展者の方の出展製品のインデックス企画になりますから。そのような形でバイヤーの方のバイイングにさらにアイデアを与えるものであったり、効率を高めるような企画はこれからも打ち出していくと思いますし、我々も日本の状況をフランクフルトとも積極的にシェアしたいと考えています。

浜野 日本の出展者も、アンビエンテの企画を有効に活用していただきたいですね。どうもありがとうございました。

その2 「Trends」コーナー担当者に聞く
最新トレンドとは?

「アイデア、素材や時代をつなぐ」ことが
大きなテーマ

「アンビエンテ」でトレンド展示を担当するのが、ボラ・ヘルケ・パルミザーノ・デザイン事務所。6月に東京で行われたインテリア ライフスタイル展の会場で、同社のアネッタ・パルミザーノ氏とクラウディア・ヘルケ氏に、内閣府 政策参与(クールジャパン戦略担当)であるBrandLand JAPAN浜野京シニアプロデューサーが、お話を伺いました。

浜野 アンビエンテの「Trends」展示はいつも楽しみにしています。いろいろな国の出展者の商材を選び、ミックスして、いくつかのテーマでキュレーションして見せてくださるのは、来場者にとってとても参考になります。今年のテーマについてお伺いできますか?

パルミザーノ 今シーズンは「フュージョン、リンク、コネクション」、つなげる、つながることを大きなテーマにしています。それをベースに4つのテーマ、「modest regenerations」「opulent narrations」「colourful intentions」「technological emotions」を定めています。

浜野 そのようなテーマやトレンドを決めるのは、いつ頃から準備を始めるものですか?

パルミザーノ 1年ほど前からです。いろいろな国の出展者のカタログなどを集めて、そこからどういうデザインなのか、カラーなのかを分析しながら、1年かけてトレンドを見極め、選定していきます。私たちが提示するトレンドの多くは、次のシーズンで消えるようなものではありません。つねに長期的な視点に立って、その内容を決めているんですよ。去年のミラノサローネで私たちが非常にインスパイアされたプロジェクトが、吉岡徳仁さんとLGとのコラボレーションでした。未来を感じる素晴らしいもので、アンビエンテにも少し取り入れました。

ヘルケ ミラノサローネのデザイナーの中でも、吉岡徳仁さんはアーティストらしい一人ですね。彼はつねにアイデアの裏側にある思想を取り入れ、技術と感情を融合させることでわたしたちを驚かせてくれます。彼からはとても影響を受けているんですよ。彼の作品には特にアンビエンテのテーマのひとつである「Technological Emotions」を見ることができます。これは先を見通すアプローチと同時に静かな内省的方向をもったスタイルになります。

浜野 吉岡さんの独特のスタイルですね。

パルミザーノ ほかにも「Technological Emotions」を感じられる面白いものはたくさんあります。例えば、日本のデザインですが、飛行機の部品だったアルミ製のハニカム素材を2枚のガラスシートの間に挟んだものとか。

ヘルケ これは素材の合わせ方がとても融合的です。

パルミザーノ このテーマではwell-being(心身ともに健康であること)というものが大きく関わっています。目指すのは、技術を取り入れて人間が心地良くいられること。例えば、瞑想的な方法で良質な睡眠を得られるロボテックピローと呼ばれる枕は、とても興味深い製品です。

浜野 自然のものや従来の素材をテクノロジーと組み合わせていくことで、well-beingを目指すというわけですね。

パルミザーノ アイデア、素材、インスピレーションの融合です。リネンと紙を一緒にして新しい生地を作ったり、柔らかい木にメタルを差し込んで融合させたり。どれもすばらしいと思います。また、興味深いことに古いものから新しいものも生まれています。オランダ人デザイナーのピート・ヘイン・イークは、いつも古いものを特別な方法で再利用することで新しいものを生み出します。例えば、ヴェネチアのムラーノガラスのアンティークのパーツを組み合わせて、新しいシャンデリアに生まれ変わらせる。つまり過去と未来が繋がっているんですね。そして、それらはひとつとして同じものはないんです。

浜野 クラシックや、トラディショナル、モダンなど、従来のテーマとどう関わっていくのでしょうか。

パルミザーノ クラシックとかトラディショナルも依然として重要なテーマだと思います。古いものから新しいものを作り出すこと。伝統的な考え方や手法から完全に新しいものを作り出すんです。それを象徴するものとして、私たちの展示では、有名なデザイナーによるいくつかの作品を紹介しています。

小さな家、空間を設えるトレンドは
日本にチャンス

浜野 ところで、6月の東京のインテリア ライフスタイル展でもいろいろな商品をご覧になったかと思いますが、インスパイアされるような商品はたくさんありましたか?

パルミザーノ もちろんです。毎回たくさんの商品から刺激を受けています。今回もキッチン用品や美しい装飾品などさまざまな商品を見つけることができました。中でも印象的だったのは、デザイナーのマテリアルの使い方やノウハウの部分です。私たちにとって、本当に大きなインスピレーションとなりました。

浜野 日本の商材で世界にもっと出てきたらいいのにと思われるものはありますか?

パルミザーノ たくさんあります。例えば、今、世界的に、タイニーハウスと呼ばれる小さな家を設えるというトレンドが続いて、生活の場がどんどんコンパクトになっています。そのため、これまでよりも小さな商品が注目を集めているので、日本からはそういった商品が出てきたらいいですね。

浜野 それは日本の得意とするところですね。ところで、これまで「Trends」のコーナーに登場してこなかった新しい国や地域のものはあるのでしょうか?

ヘルケ 新しい国ということではありませんが、アンビエンテでは、毎年パートナーカントリーという国をひとつ決めて、そこの国を盛り上げていこうというプログラムがあります。来年はインドです。インドの商品としては、テキスタイルとハンディクラフト、手製のものに注目しています。ハンディクラフトと言えば、メキシコや南米の国もすごくクオリティが高いですよね。ファッションレーベルでも高いレベルの手仕事を採用していることも多く、大変驚いています。

世界的に広がるサステナブルの潮流

浜野 近年、サステナブルというテーマも重要性を増していると思います。新興市場の出展者やバイヤーもたくさんいらっしゃるアンビエンテではいかがでしょうか?

パルミザーノ サステナビリティは特に重要なテーマでしょう。アンビエンテにおいても、その背景には未来を見据えたり、自然環境に配慮したり、人々を心身ともに幸せにするような意味合いがあると思います。実はプラスチックもそうなんですが、多くの製品で再利用素材を使用する傾向があるんです。テキスタイルもそうです。ミラノサローネでは、古いテキスタイルを使って全く新しい素材を作り、それで家具が作られていました。手がけているのは「Really」という会社で、その新しい素材はテキスタイルボードと呼ばれ、見た目は木ですが、実は繊維からできているというものです。この会社はスローガンが素晴らしくて、「A problem becomes an idea.」(問題はアイデアになる)。例えば、汚染は問題ですが、それがアイデアになる。この言葉はすごく大切にしたいと思います。

浜野 色やサイズ、形の好みは国によって違うと思いますが、トレンドの重要なファクターである色はどういうものがトレンドですか?

パルミザーノ 1色だけをトレンドとして捉えないで、つねに色のアレンジなり、色の特徴を捉えているんですが、今は、虹色やメタリックなもの、ちょっと粗くてざらざらしているような色や素材感がトレンドですね。あとは色が自然から派生するものだったり。アンビエンテのテーマは先程申し上げたように4つあるんですけど、色で解釈すると4つのうち1つはとてもカラフルなものです。ネオンの色や、エネルギーのある色。面白いことにその背景には、サステナビリティにつながる再利用素材の存在があるんです。

ヘルケ また、装飾品、装飾的なものは豊かなテーマですので、明るい色が当てはまります。インテリア部門ではカラフルなものが多く見られます。ハイエンドの製品で、装飾として濃い色を他の色と混ぜ合わせています。他には、すごく深い木の色合いや深みのあるカラーをテーマとして扱っています。あとは先ほど申し上げたように、ひとつがメタリックなもの、もうひとつが自然から派生した色。酸化の過程で作られる自然な色です。

商品選びは、価格ではなく、
デザインを重視する

浜野 「Trends」にお選びになる時は、価格という条件をどう見られているのでしょうか。

パルミザーノ ビジネスを念頭に置いた面白い質問ですね。実は私たちがテーマを考えるときは、ハイエンドなデザインであるかどうかをまず考えます。価格をあまり考慮しないのですが、結果としてさまざまな価格帯の商品が揃い、独自性がある、特別な製品が混在するという結果になっています。

浜野 なるほど。「Trends」では、例えば、テーブルセッティングでもラグジュアリーなものと、コストを抑えたものがミックスしてあって、素晴らしいハーモニーを感じます。まったく違う国のもの、違う価格のものを一緒にキュレーションして見せて下さって、素敵だと感じさせるのは、さすがプロだと感嘆しますし、「つなぐ」という大きなテーマを実感できます。この「Trends」がアンビエンテの売りの一つになっている所以ですが、その中にたくさんの日本の製品を発見できてとても嬉しくなります。

パルミザーノ 私たちも自分たちのトレンドの中で、日本の製品を紹介することができてとても光栄です。日本のデザイナーは素晴らしいし、日本にはヨーロッパにはない新しくて斬新なものがあるので、いつもインスパイアされています。

浜野 これからも「Trends」のコーナーに期待しています。本日はありがとうございました。